勝っていても負けていても、
今村猛は肩をつくる。140キロ台後半の直球にスライダーを軸にしたシンプルな投球スタイル。表情を変えることなく、早いテンポからキレのあるボールを投げ込む。ベンチにとって、最も使い勝手のいい投手だろう。
8月16日時点でチームトップの
ジャクソンに次ぐ49試合に登板。防御率2.91と安定した働きを見せている。
注目すべきは登板数だけではなく、イニングまたぎも幾度となくこなすこと。投球回数はジャクソンより1イニング多い。だが「自分の仕事、立場はとにかく言われたところで投げること。毎日かもしれない。だからそれができるように準備したい」ときっぱり。ポーカーフェースに隠された心の奥は、とてつもなく熱い。
その心意気を買い、「猛には頑張ってもらわないと困る」。緒方監督も、畝投手コーチも口をそろえる。
流れを変えた試合もある。8月7日の
巨人戦(マツダ
広島)。今村は1点を追う9回に4番手として登板。五番から始まる打線を三者凡退に打ち取った。投手陣は1回を除き毎回走者を背負っていたが、今村が流れを変えた。
9回裏の攻撃で二死から菊池が同点弾。新井のサヨナラ打で劇的勝利を飾った。今村は3勝目に「チームの勝ちに貢献できたことがうれしい」と笑った。
目立たぬ鉄腕が、広島を陰から支える。今村自身もまた、それを望んでいるのかもしれない。