代打の切り札として、選手会長として、チームを支えた。
小窪哲也は昨オフFA権を行使せずに、
広島に残留を決めた。宣言していれば興味を示す球団もあったかもしれないが、代打道が待っていたとしても広島を選んだ。
「もちろん野球選手である以上、全部出たい。でもそれ以上にチームの勝ちに貢献したい」
がむしゃらに、チームを陰から支えた1年だった。
脅威の代打成功率.380をマークした昨季とは異なり、今季は結果が出ない日々が続いた。「何がどうなっているか分からない」と嘆いたこともある。ただ「オレはそれを表に出してはいけない」と我慢を続けた。誰もいない室内練習場にこもり、打ち続けた。7月30日の
DeNA戦(マツダ広島)では劣勢の9回に満塁弾。ギリギリのところで意地を見せていた。早い回から投手の代わりにネクストバッターズサークルに立ち、球場の雰囲気に慣れる。地道な作業は続いた。スタメン起用も増え、くらいつく日々が続いた。
首脳陣は代打での成績と同様に、小窪の存在感を重視していた。結果が出なくても、チームを裏でまとめているのを誰もが理解していた。そして導いた25年ぶりの優勝。最後は二軍にいたが、新井が、黒田が、菊池、丸が、小窪の名前を出した。CS、日本シリーズへと続く道。「結果を残して貢献したい」と小窪は言った。
勝利の一打を、チームがファンが期待している。