ペナントレースはV逸に終わったが、
和田毅の復帰がなければこれほどの優勝争いもできなかっただろう。15勝5敗、防御率3.04。左ヒジ違和感を訴え、9月17日の
オリックス戦(ヤフオクドーム)でシーズンを終えたが、5年ぶりの日本球界復帰は圧巻だった。
「アメリカではできなかった。こういう試合を勝つために帰った」
象徴的だったのは、マイナス0.5ゲーム差で迎えた8月19日の
日本ハム戦(札幌ドーム)だった。8回4安打無失点。付け入るスキさえ許さない。1週間前の
ロッテ戦(QVCマリン)では134球完投。疲れはあったに違いない。試合後のヒーローインタビューではまだ、息が上がっていた。「全身全力で投げた」。絶対に負けられない。ターニングポイントを熟知した快投だった。
ブランクを埋めてすぐに適応した。6月8日の
DeNA戦(ヤフオクドーム)ではヒジの高さを意識してプレートの立ち位置を修正。ホームプレートから離れて立つ打者が多いメジャーではカットボール、ツーシームを駆使し、打たせる投球をするために三塁寄りを踏んだ。だが、ホーム寄りに立つ打者の多い日本では苦しんだ。直球、スライダーを右打者には食い込むよう、左打者には遠ざかるように再び一塁側へ。原点回帰したことで勝ち星が一気に積み上がっていく。
グラウンドの外では食事会を開催し、ベンチ裏では雰囲気を盛り上げるためのマジックショーも主催した。精神的にもチームを支えた、まぎれもない大黒柱だった。