真の四番打者へと成長するためには、変わるしかない。手のひらをボロボロにしながら、安田尚憲はバットを振り続けている。
「すごい内容の濃い練習ができているし、4年目のキャンプの中で一番バットも振り込めていると思う」
平成唯一の三冠王で、石垣島キャンプに参加した
松中信彦臨時コーチからは、強化指定選手に指名された。ときには、グラウンドに倒れ込むようにして、練習を終えることもある。「下半身を使って、ボールを遠くに飛ばすことを意識して練習しています」と、歯を食いしばって、汗まみれになった。
昨季は87試合で四番を務めた。打率.221、6本塁打、54打点。実力でつかんだ四番ではない。
レアードが腰痛で離脱し、
井上晴哉らの調子が上がらなかったことから、
井口資仁監督が将来性を考えて、若い安田に経験を積ませようと決断したのだ。
そんな状況は、安田自身も理解している。今年はもう一度、レギュラーをつかみにいかなくてはならないのだ。その先に「四番」が待っている。松中コーチからは「ホームランを打てる打者になれ!」と言われている。
「そのためには強い打球、強いスイングが必要。そういう打球がもっと増えるようにしていきたい」
打撃練習で意識するのは、きれいなスピンで、高く上がる放物線だ。引っ張るのではなく、センター方向へ伸びる打球を心掛ける。
「昨年の結果ではダメだと思っているので、何かを変えていかなければいけない。少しでもホームランが増えるように、そんな軌道が増えるように、やっていきたい」
安田がどんなシーズンを送るのか。背番号5が残す数字は、チームの成績をも大きく左右しそうだ。
写真=BBM