
5月に入り、ようやく中村晃のバットからコンスタントに快音が聞かれ始めた
使い古された「レフティースナイパー」の文言が、ピタリとくる打席になった。4月29日の
日本ハム戦(PayPayドーム)。互いにゼロ行進で迎えた6回、中村晃のバットが均衡を破る。好投の相手先発・
池田隆英の高めに入った初球のストレートをとらえると、ライナー性の打球が右翼席へ。先制の2号ソロは、そのままV打となった。
大言壮語しない男が「今年一番の手応え」と言った。18日の
西武戦(メットライフ)では、9回に
増田達至から同点の1号2ラン。23日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)では9回に同点の適時二塁打。打率2割台中盤をさまよう状況は、いかにも「らしくない」が、ここぞの場面での切れ味には変わりがない。「真っすぐにヤマを張ったと思うけど、いい読みだった。(試合)後半になればなるほど当たってくる。さすがだなと思います」。
工藤公康監督もうなった。
自主トレに伴う後輩・
栗原陵矢が開幕から好調。「栗原はすごく調子がいいし、取り組みも素晴らしい。僕も頑張りたい」と、いまや自身の励みに。4月上旬に栗原のバットを使い始めた。自身のモデルより約20g軽い。それから調子が上向いた。
チームでは試合前、円陣での声出しが名物になっている。ある日、中村晃の出番が巡ってくると、「昨日真砂(勇介)が言ってましたけど、チャレンジすることが大事。なので、僕もやってみようと思います」。目の下に貼るアイブラックのシールを取り出し、眉にペタリ。ナインは大爆笑、真砂は「ナイスチャレンジ!!」と大喜びだった。選手会長は近寄りがたい存在感を醸し出すではなく、等身大の姿で戦っている。
写真=湯浅芳昭