昨シーズン終了後、今村信貴は必死の思いを明かした。「信頼される投手にならないと厳しい。先発はやりたいけど、一軍にいられるならどこでもいい」。28歳。プロの世界で生き残るためには、どんな役割でも一軍に定着しなければならないと感じていた。
在籍年数11年目は巨人投手陣で最も長い。ドラフト2位で2012年に入団した左腕は通算23勝。先発、中継ぎの両方を経験しながら、なかなか一軍に定着することができずにいた。だが、開幕からリリーフに専念した今季はリード時の7、8回に起用されるなど重要な役割を担っている。6月1日時点ですでにキャリア最多の22試合登板、16ホールドをマークしている。
春季キャンプは二軍スタートだったが、オープン戦で結果を残してブルペンに配置された。今年1月の自主トレでは元巨人の
西武・
内海哲也から「怖さがない。いかに怖さを出すか」と助言され、「なるべく止まらずに、足を上げてすぐに投げる」という投球フォームに変更。「師匠」の言葉がヒントになり、躍動感が増して球にもキレが出た。
4月下旬には四球を乱発する登板が重なり、
原辰徳監督に「もうフォローができねえな」と苦言を呈されることもあったが、あらためて指揮官からは「リーダー的存在ですからね。その辺(信頼)は揺るぐものはない」と変わらず起用を続けられて復調。居場所をつかんだ左腕がリリーバーとしての輝きを放っている。
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