本人は守備職人と呼ばれることに抵抗感があるかも分からない。だが守備に関して、これほど頼もしい選手はそうはいない。昨季、外野手として2年連続でゴールデン・グラブ賞を獲得した辰己涼介だ。
強肩からのレーザービームに、俊足を生かした広い守備範囲は球界屈指。その身体能力も素晴らしいが、それよりも見事なのは打球に対する一歩目の反応の速さ。実は、相手打者が打席に入る前から準備していると言う。
「ネクストバッターズサークルにいるときから、相手バッターと投手の相性を考えています」
データなども考慮し、ポジショニングを取った上で「予測して動く」。バットがボールに当たった瞬間、最高のスタートを切って落下点に向かう。データにスピード、捕球技術に打球判断。すべてがそろってこその堅守なのだ。
少し前になるが、4月16日の
ソフトバンク戦(
楽天モバイル)の9回、先頭打者の
周東佑京の放った中前へ落ちそうな飛球を好捕。風の影響もあって一歩目の反応は遅れたが、あえて飛びつかずにキャッチ。どんな状況でもファインプレーを見せてきたからこそ、楽天ファンは「残念そこは辰己」という言葉を使って称えるのだろう。
同23日の
日本ハム戦(楽天モバイル)では同点で迎えた延長11回一死一、二塁で右中間へサヨナラ打。まだ打撃では苦しむ場面も見られるが、お立ち台では「圧倒的な成績を残すので、シーズン終わったときに楽しみにしておいてください」と力強く言い切った。守備はもちろんバットでも、チームを勝利に導いていく。
写真=BBM