同点の9回裏二死満塁です。打者の放った打球は左翼席に飛び込みました。劇的なサヨナラ本塁打です。ところが、喜びのあまりに打者は、一、二塁間で前の走者を追い抜いてしまいました。三塁走者は打球の行方を見守っていて、スタートが遅れたので、その瞬間、まだ本塁を踏んでいません。打者は一塁走者を追い越したのでアウトとなり、スリーアウトとなりますが、三塁走者の得点は認められ、サヨナラ勝ちとなるのでしょうか。 得点は認められず、試合は延長戦になります。かつては、二死後の本塁打で走者の追い越しがあった場合は、アウトになった走者より前を走る走者は、スリーアウト後に本塁を踏んでも得点になるとしていた時代もありました。しかし、現在は規則が変わっています。
得点に関しての規則を述べている4.09(a)には、
「3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁と進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される」 と、第3アウトと得点の関係が述べられています。そして、その[注2]には次のような一文があります。
「本項は打者および塁上の走者に安全進塁権が与えられたときも適用される。たとえば、2アウト後ある走者が他の走者に先んじたためにアウトになったときは、そのアウトになった走者よりも後位の打者または走者の得点が認められないことはもちろんであるが、たとえアウトになった走者より前位の走者でも第3アウトが成立するまでに本塁を踏まなければ得点は認められない(以下略)」 走者の追い越しでアウトになり、せっかくの本塁打が取り消された例はいくつかありますが、共通するのは、いずれも一死で走者が一塁にいるときです。一塁走者が際どい打球の行方を見極めているとき、無我夢中で走ってきた打者が追い抜いてしまうのです。皆さんも注意しましょう。