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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

大飛球に左翼手がスタンド内へグラブを伸ばして捕球を試みるも、観客が直前でキャッチ。この場合、判定は本塁打?観衆の妨害行為?

 

左翼後方への大飛球です。左翼手はフェンス前でジャンプし、スタンド内へグラブを伸ばし、捕球を試みましたが、その前に観客がグラブを差し出してボールをつかんでしまいました。この当たりは本塁打になるのでしょうか。それとも観客の妨害行為で打者アウトでしょうか。

 選手がスタンド内に腕を伸ばし、捕球しようとした打球を観客に横取りされたのなら、これは本塁打です。“キャッチ”については、野球用語の定義15の【原注】で左記のように定められています。

「野手はフェンス、手すり、ロープなど、グラウンドと観覧席との境界線を越えた上空へ、身体を伸ばして飛球を捕らえることは許される。また野手は、手すりの頂上やファウルグラウンドに置いてあるキャンバスの上に飛び乗って飛球を捕らえることも許される。しかし野手が、フェンス、手すり、ロープなどを越えた上空やスタンドへ、身体を伸ばして飛球を捕らえようとすることは、危険を承知で行なうプレイだから、たとえ観客にその捕球を妨げられても、観客の妨害行為に対してはなんらの規則上の効力は発生しない」

 スタンド内に腕を差し伸ばし、捕球すればアウトは認められますが、観客にボールをその前に横取りされても文句は言えず、本塁打として認められるということです。

 このプレーが今年9月17日の広島中日[マツダ広島]でありました。8回裏に広島は一死一塁で、丸佳浩が左翼へ大飛球を打ちました。中日の工藤隆人左翼手がジャンプしましたが、スタンドのファンがグラブを差し伸ばしキャッチ。このときファンのグラブがグラウンド上に出ているのなら、観客が野手の捕球を妨げたとして打者アウトになります。中日から抗議があり、約10分のビデオ検証の結果、本塁打として認められました。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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