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佐野泰雄[平成国際大・投手]
「先発完投」にこだわる大学野球エースの鑑

 

関甲新学生野球連盟に所属する平成国際大が、リーグ優勝を遂げたのは2003年秋のみ。以降、昨秋まで10年20シーズンは、上武大(14回)と白鴎大(6回)が覇権を分け合っている。タフネスサウスポーが最終学年を迎える今春、この“2強”を切り崩すチャンスがやってきた。
取材・文=岡本朋祐
写真=内田孝治



3年秋まで全69試合で7割以上に登板

 投手とは投げるのが仕事。エースである以上、マウンドは譲らない。佐野泰雄は1年春からずっと、その思いでプレーしてきた。11年春の入学以来6シーズン、平成国際大として69試合を戦っているが、そのうち左腕エースは51戦に出場。つまり、7割以上の試合に登板している。「交代するのは悔しい。任された以上は最後まで投げたい。負けていても自分が続投して、野手が反撃できるきっかけを作る。1回戦で負ければ2回戦も先発しますし、3回戦も行けるよう準備しています。3連投が大学野球における、主戦投手の仕事だと思っている」

 連投を回避するようになった昨今の大学球界において、エースの鑑だ。今年の「ドラフト候補」と呼ばれる4年生投手で最も投げている。驚くべき数字がある。3年秋の時点で17勝21敗。完投は20(うち完封8)を数え、330イニングで301奪三振をマークしている。今年は大学生左腕が「豊作」と言われるが、3投手と佐野を比較すると、すごさが分かる。

▽明大・山崎福也(日大三)16勝6敗、188回2/3、169奪三振、2完投
▽法大・石田健大(広島工)15勝6敗、163回2/3、145奪三振、6完投
▽中大・島袋洋奨(興南)11勝17敗、216回2/3、202奪三振、9完投

 東京六大学、東都大学の猛者たちを上回る実績を残す佐野だが、優勝経験なし。そればかりか、3年時の春秋の4位が最高と、チーム成績が伴わない。関甲新学生リーグで“2強”を形成する上武大と白鴎大からも完投勝利を挙げているものの、勝ち点勝負(2勝先勝)となると、勝ち切れないのが現実だ。平成国際大・大島義晴監督は、説明を付け加える。

「打線の援護に恵まれていないのは確かですが、佐野の場合、大学4年間で7年分のことをやっているので……。ゲームの中で経験を積んでいくしかない。持っている素材は高校時代から良かった。あとは考え方だけ。リーグの枠内でしか物事を見ていないですから、いろいろなものを吸収できる余白を持った選手です」

打線の援護がない中で芽生えた奪三振のロマン

 佐野は和光高での3年間をこう振り返る。「ただひたすら、全力で腕を振るのみでした」。高階中時代に在籍した和光シニアでは制球難のため3番手投手だった。本格的にピッチャーとなったのは、高校入学以降である。同期は3人で、全体の部員も20人足らずと、佐野が投げざるを得ない状況だった。ダブルヘッダーが組まれる土、日の週末で計4試合、すべてを一人で投げ切ったこともある。バックの守備力が乏しい中で、打たせてもアウトにできない。佐野は「一番安全」と言う、三振へのこだわりを持つようになる・・・

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