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鈴木優[雪谷高・投手]
甲子園での革命を誓う都立No.1右腕

 

今年の東京は都立が熱い。3月21日に開幕する第86回選抜高校野球大会には、21世紀枠で小山台高が初出場する。過去に都立勢は夏の選手権へ3校(国立高、城東高2度、雪谷高)が駒を進めているが、センバツは初。同校が注目される中、2003年夏に出場経験のある雪谷高の144キロ右腕は、春を心待ちにしている。
取材・文=岡本朋祐 写真=大泉謙也



4勝で小山台高との直接対決が実現


 春季東京大会の組み合わせ抽選会が、2月23日に行われた。その結果を伝え聞いた鈴木優は真っ先に、相原健志監督の下へとやってきた。「ようやく、小山台とできます!」

 指揮官はすぐにクギを刺している。「一次予選は平気なのか? まずは、一つひとつだ!」

 雪谷高は昨秋、都大会出場を逃したため、今春は一次予選(秋季都大会出場48校は免除)からの登場。本大会へは、3試合を勝ち上がらなければならない。小山台高との2回戦(4月5日)を実現させるには、さらに1回戦突破が条件。一次予選1回戦(3月16日)は、11年に右腕・吉本祥二(現福岡ソフトバンク)を輩出した足立学園高と、初戦から気が抜けない難敵だ。しかし、鈴木は「都立No.1」の威信をかけて、はやる気持ちを抑えられない。小山台高のエースは、主将も務める139キロ右腕・伊藤優輔。2年時から「LINE」を通じて交流する良き友だが、最も身近なライバルでもある。「正直、同じ都立として(今春のセンバツ出場は)悔しさが強い。負けたくない思いは当然、ある」

 実は相原監督も、センバツ帰り初戦となる小山台高との直接対決を待ち望んでいる一人。“立場的に”先を見ることができないだけであった。雪谷高は03年夏に国立高、城東高に次ぎ、都立勢として甲子園の土を踏んだ。「選抜」とは異なり、「実力」で出場権をつかんだ誇りがある。「センバツも、初出場の都立はウチでありたいと思っていました。鈴木の代は、春の切符を取りに行けるチームだったんですけど……(苦笑)」

ブレークしたのは2年夏の3戦連続完封


 昨秋に144キロをマークした鈴木の下へは、春季都大会を前に、NPB8球団があいさつを済ませている。鈴木は「行けるものなら、勝負したい」と、高卒でのプロ入りへ意欲的だが、相原監督は手綱を締める。「まだ『仕上がりを見せてください』と言われている段階。指名とは別問題で、春から夏にかけ良いモノを見せていけば(プロも)近づくと思う」

 卒業後の進路を親身に考える相原監督こそ、鈴木が投手として飛躍した“恩人”だ。中学時代に在籍したクラブチームでは捕手。「(優勝した)区大会では走られた記憶がない」という強肩が武器だった。甲子園出場実績のある私学からは、捕手として誘いがあったというが、「ピッチャーをやりたい」思いが強かった。その意向を受け止め、投手としての潜在能力を評価していたのが相原監督。

 雪谷高は定時制があるため・・・

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