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麻生健斗[日本文理大・捕手]
野球人生を変えた運命のコンバート

 

高校時代は「強肩強打の遊撃手」として、スカウトの高評価を得ていた。複数の球団が興味を示し、プロ志望届を提出したものの、ドラフトでは指名漏れ。地元・大分にある日本文理大へ進学して2年を終えた秋、ターニングポイントを迎えたのだった。
取材・文=岡本朋祐 写真=上野弘明



高校3年時のドラフトは志望届提出も指名漏れ

 17歳の心に深く刻まれた試合がある。10年夏、大分大会2回戦。前年秋に九州大会へ出場した大分高は、春夏通じて初の甲子園出場へ向けて有力校の一つに挙げられていた。強肩強打の遊撃手・麻生健斗に、147キロ右腕・三好銀次の二枚看板。宇佐高との一戦は7回まで5対1とリードしていた。8回表、大分高は無死満塁のチャンスを逃す。その裏、三好は左翼へ回り、救援投手へバトンを渡す“必勝パターン”へ持ち込むものの、これが大誤算。乱調で1失点を喫して、エースがマウンドへ戻ったが、相手の流れは止められない。押し出しで2点差となり、なおも無死満塁。

「ホームゲッツー」ではなく、「後ろゲッツー」のシフトを敷いた。つまり、1失点は承知の上で中間守ゴロが遊撃手前へ転がってきた。「本塁に投げるか……。二塁送球しても微妙なタイミングだった」。この迷いが捕球ミスとなり、1点差。名手の失策で大分高は完全に浮足立つ。次打者の適時打で逆転を許すと、計11失点で8回コールド(5対12)。「もう、終わってしまったのか……」。麻生は現実を受け止められず、試合後はしばらく涙も出なかったという。

 大分高では1年秋からレギュラーで2年夏に県大会4強。準決勝では今宮健太(現福岡ソフトバンク)を擁する明豊高に敗退。1学年先輩のプレーに「まさに怪物でした。あれがドラフト指名を受けるレベルなんだ」と憧あ こがれを持ち、プロを意識する。同夏は16打数9安打、1本塁打。スカウトたちも麻生のプレーに目を留め、同秋の県大会準優勝で九州大会出場もアピール材料となった。ある球団が最終30人のドラフトリストまで残したという情報も耳に入り、プロ志望届を提出。ところが、「麻生健斗」の名は呼ばれなかった。

捕手難のチーム事情と遠投120メートルで白羽の矢

 ドラフト会議の結果を待ってくれたのが、地元・大分の日本文理大。同じくドラフトで指名漏れとなった三好とともに、同校へ入学した。三好は大学進学を機に、野手に転向。高校通算46本塁打のパンチ力は、金属から木製バットになっても変わらず、1年秋から不動の四番の座に座った。対照的に麻生は木製バットの対応に苦しみ、2年春から出場も定位置奪取には至らなかった。

 2年秋のシーズンが終わると、高武良至信コーチが「キャッチャーやらんか?」と声を掛けた・・・

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