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日本とアメリカだけではない。メキシコ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラ、韓国、台湾…・…。気が付けば8カ国でプレーし40歳となった。異国の地で成し遂げた「40歳代での開幕4戦4勝」のプロ野球新記録。流浪の野球人生が歴史的な快挙を導いた。幾多の修羅場を乗り越えて、辿り着いた今がある。
文=田辺泰樹(楽天イーグルス広報)、写真=小山真司、BBM

流浪の助っ人右腕が球史に名を刻んだ夜


 世界各国で何度も交わして来た勝利のハイタッチだが、この日はいつもと違う高揚感を覚えた。大きな歓声と拍手を浴びながら、ヒーローインタビューに向かう。

「私がここに立っていて良いのでしょうか?」

 この試合の主役は、お立ち台の上で、いたずらっぽく笑った。4月24日のロッテ戦(コボスタ宮城)、ケニー・レイが「40歳代投手による開幕4戦4勝」の日本記録を達成。8カ国でプレーした不惑の右腕が球史にその名を刻んだ夜だった。

 この日は、開幕3戦3勝で迎えた今季4試合目のマウンド。レイは試合序盤から140キロ台後半の直球をテンポ良く投げ込んだ。スライダー、チェンジアップを駆使し、勝負所ではツーシームが冴え渡る。打者の手元で微妙に変化する決め球を武器に、5回まで1人の走者も許さない完璧な投球を披露。6回1失点の投球で4勝目を挙げ、90年のロッテ・村田兆治(40歳代で3戦3勝)を抜いて偉業を達成した。

「記録を残すことが出来てうれしいです。ただ、私の名前が記録に載るとは思いますが、私だけではありません。チームで作り上げた記録ということを分かって欲しいです」

4月24日のロッテ戦[コボスタ宮城]で開幕から4戦4勝。90年にロッテの村田兆治がマークした3戦3勝を抜く40歳代投手の新記録を樹立した


 謙虚な言葉を並べて仲間に感謝の意を示した。

「日本は野球が盛んな国で、野球は尊敬されているスポーツです。この記録に私の名前が載ることは非常に光栄ですし、感銘を受けています」

 各国を渡り歩いたアメリカ人は、東北の地でその名を残した。

 ジャーニーマン(旅人)――。多くのチームを渡り歩く選手のことを指すこの言葉は、まさにレイの野球人生に当てはまる・・・

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