2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 10分間インタビューも『日本シリーズかく戦う』
今回は『1958年10月22日号』。創刊第28号で定価30円。中カラー見開きは『健闘』と題し、南海・
杉浦忠、
野村克也のバッテリー。この号までにセは巨人、パは西鉄優勝が決定。序盤戦から首位を走ってきた南海は、つまり「健闘実らず」終わった。
巻頭グラビアは、その西鉄─南海の死闘だが、胴上げシーンはなし。セ、パ優勝は同じ10月2日に決定。巨人は休養日にマジック対象の
阪神が敗れ、西鉄は近鉄ダブルヘッダーで連勝、マジック対象の南海が東映にサヨナラ負けしての優勝決定だった。
巨人と西鉄の日本シリーズは3年連続となり、さまざまな因縁話が掲載されている。恒例の10分間インタビューも『日本シリーズかく戦う』と巨人・
水原円裕監督、西鉄・
三原脩監督が登場しているが、読んでいくと、このインタビュー時点では、まだ優勝は決まっていなかったようだ。
藤田元司、
藤尾茂の巨人バッテリー対談も、冒頭は、
藤尾 ガンちゃん(藤田投手の愛称)こんど名古屋で優勝をきめな、あかんなあ。
から始まっている。
ふたりの会話の中から、当時のバッテリー事情が分かる。
藤田 藤尾さんに申し訳ないことがある。
藤尾 また、どうして。
藤田 また突き指をさせちゃった。
藤尾 とんでもない。こりゃこっちの不始末だ。
藤田 まっすぐというのをシュートを投げたり、シュートというのにフォークを投げたりするからキャッチャーに申し訳ないよ。ぱっとバッターの顔を見ると何か気が変わる。それからサインを受け直していざ投げようとすると、またバッターにわかりゃしないかなって気持ちになる。それでサインと違うボールを投げる。藤尾さんが突き指するってことになる(笑)。
慶大、日本石油から巨人入りし2年目、この年は29勝13敗、防御率1.53でチームを引っ張った藤田。対して鳴尾高から53年にプロ入りし、正捕手になって3年目の藤尾。仲もいいらしく会話が弾むが、これでは捕手は大変だな、とも思う。
ただ、藤尾は苦痛とは思ってなかったようだ。
藤尾 こういうことがあるんじゃないかな。ぼくは、いつもバッターの横顔を見ている。ピッチャーは真正面からバッターを見ている。バッターが緊張しているとか、打ち気がないとか、見る角度がちがってくる。だから藤田君、前から見ていて、このバッターにはフォーク・ボールを投げたほうがいいような顔をしていると思ったとき……いや、ほんとにそういう顏って分かるよ、そういうときは(サインと違っても)フォークボールを投げてくる。そういうことは、当然なんですからねえ。
藤田 そのとおりだね。藤尾さんって、非常に柔軟性に富んでいるでしょ。
藤尾 うふっ(と照れる)。
まさに捕手は女房役ということだろうか。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM