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川口和久WEBコラム

世界が最注目する高校生、大船渡・佐々木朗希のすごさと、ちょっと気になること/川口和久WEBコラム

 

大谷翔平の高校時代との違いは


楽しみな投手が出てきたな


 すごいピッチャーが出てきた。
 大船渡高の佐々木朗希だ。
 最速が163キロで150キロをコンスタントに出す高校生なんて、これまでいなかった。
 花巻東時代の大谷翔平(現エンゼルス)も160キロを出したが、当時の完成度は佐々木より低かったと思う。
 いい球と悪い球のムラがあった。
 昭和の怪物、作新学院高時代の江川卓さんは「スピードガンがあったら150キロ台も」と言われていたが、160キロ超なんて、もはや異次元だ。もちろん、投手というのはスピードガンの数字だけではないが、その話はまた別の回で。

 今の日本人最速は大谷が日本ハム時代に出した165キロだが、間違いなく、何年か先に佐々木が抜くんじゃないかな。
 考えてみたら、大谷も菊池雄星(マリナーズ)も岩手出身か。なんだか、すごい。

 批判もあるようだが、あれだけ高く足を上げて投げられるというのは、下半身が柔らかく、しっかりしているからでもある。
 俺も現役時代そうだったが、昔の投手は足を高く上げる投手が多かった。今は、より制球重視という意識があってコンパクトにしているのかもしれないが、もう一つ、昔の高校生のほうが下半身が強く、柔らかかったこともある。

 昔がすごかった、という話じゃない。パワーや体格は今のほうが上かもしれないが、昔は練習でも走り込みや今では弊害が多くやっていないが、うさぎ飛びを死ぬほどやった。
 生活もある。椅子と机の文化と畳文化の違い、臭い話になるが、トイレが和式か洋式もある。和式トイレで長時間踏ん張れない子も多くなったみたいだしね。
 メジャーに比べ柔らかいマウンドで、投手はこの“しゃがむ力”が結構大事なんだ。

 今は、いろいろな映像をユーチューブで簡単に見ることができるので、俺も大谷の高校時代と彼を比べてみたが、同じような長身投手、快速球投手でも少し違う。
 大谷はフィニッシュでボールを指から離す瞬間にぐっと体全体が沈むような動きになる。これは軸足からの力を使い、下半身を粘らせながらボールに伝えているためだが、佐々木はここであまり沈まない。

 腕の持って行き方も、大谷がぎりぎりまでヒジを出していき、少しでも打者寄りで離そうとしているのに対し、佐々木は制球を意識している面もあるのかもしれないが、体の軸回転より少し前にひょいと腕が出る。回り切る前に出るというのかな。
 おそらく打者からしたら、大谷は威圧感あるズドンという球。佐々木は伸びはあるが、球離れが少し早いから打者は見えやすく、軽く感じるんじゃないかな。シュート回転する球もあったしね。

 どちらがいい悪いじゃない。たぶん、佐々木のほうが制球力があり、150キロ超が出る確率、アベレージは高いはずだ。

 佐々木のフォームは制球重視の意識と、あとは下半身がまだ弱いから自然にこうなっているんだと思う。下半身を走り込みで鍛えたら、とんでもない球を投げるかもしれない。

 ただ、投げ過ぎに気をつけてほしいな。先ほど書いたように彼のフォームは体を回そうという動きと肩から先の動きが連動していないから、肩に間違いなく負担がかかっている。

 見ていると全球全力投球はせず、メリハリをつけているようだし、俺に言われなくても分かっていると思うが、高校野球はついついリミッターが外れてしまうからね。

 まずは、スピードを気にしないことだろう。このフォームで160キロを投げていたらいつか壊れる。190センチの長身で体の使い方もうまい。体、特に下半身を鍛え、下からの力をボールに伝えるコツが身につけば、自然と球速は上がり、肩への負担も減る。

 目指せ、日本最速166キロ……と期待はしているが、それはプロに入って何年かしてからの楽しみにしておこう。
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