昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 創刊10周年、ご愛読ありがとうございます
今回は『1968年4月8日号』。定価は70円。
1958年創刊の週刊ベースボールもめでたく10周年。この連載は、平日に1回ずつだから別に10年の節目というわけではないが、ひとまず、ご愛読ありがとうございます。
豪華企画が多数掲載されているが、とても紹介しきれない。少しずつ“つまみ”ながらいく。
巨人のコーチ陣、
白石勝巳、
牧野茂、
藤田元司、
荒川博がそろった座談会ではオープン戦でやっていた
王貞治の二番打者についても話があった。
牧野は言う。
「二番打者に固定観念がありすぎるわけですよ。二番打者はバントをするものだという。しかしそれは1回だけですよ。2回に王がトップバッターで出てきたら、四番打者でも一番打者でも関係ない。だから観念的に一番は足が速く、二番はバントがうまくて、三、四、五番がクリーンアップというのは1回だけの話です。監督(
川上哲治)がこの打線を組んだ最大の理由は、王を一打席でも多くお客さんに見せよう、しかも強打者の王が1打席でも多いほうが、うちとしては得ということですよ」
おそらく
高田繁という俊足選手を取ったこともあるか。
高田を一番、二番を王、三番にスイッチから長打力のある右に専念させる
柴田勲、で、四番・長嶋茂雄というイメージか。
前年の長嶋は打率.283、19本塁打。衰えが見えてきたという声もあり、川上監督も打線再編を本気で考えていたのかもしれない。
評論家に戻った
青田昇の記事もあった。
最大の優勝候補、巨人を苦しめる投手の筆頭に挙げたのが2年目の
江夏豊(
阪神)。
「阪神のエースは江夏になってきたとみる。巨人から5、6勝は取れる」
前年の江夏は12勝13敗。さすが青田、慧眼である。
鈴木竜二セ会長、松浦晋パ会長の対談では、試合のスピードアップとともに土日のナイターをデーゲームにすべきという話が出ていた。
松浦 僕は土曜、日曜はデーゲームのほうがいいと思うな。
鈴木 僕は土曜はデーゲームがいいな、そうして少年をプロ野球に引き付けなさい、と言っている。あるいは日曜日にしてもいいな。本当の親子の家庭中心の日としてね。それをやる勇気がないのだな。
松浦 選手のほうに、昼間やったり、夜やったりするのはかなわんという気分がある。
鈴木 そんなことで野球の選手やってられるか。
おそらくテレビ中継の問題もあり、実現まで時間がかかった。
創刊号の表紙にもなった長嶋は「巨人十年の喜びと悲しみ」という原稿を寄稿。入団時からのさまざまな思いを振り返っている。その中で、天覧試合後日談があった。
結婚した年、皇族の内輪の回に招かれ、昭和天皇・皇后に会う機会があったらしい。
「野球の長嶋です」
とあいさつし、詳細はないが、お二人から声をかけてもらい、あのサヨナラホームランについても話が出たようだ。
「日本人として、この日ほど感激したことはない。ぼくの誇りとして一生大事にしたい思い出である」
と書いてある。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM