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結局のところ一、二番に強打者を置くのは成功しているのか?

 

MLBでは、一番に出塁率の高い選手、二番に強打者を置いて速攻で得点を奪うというのがトレンドになっている。NPBでも今シーズンはこのトレンドを取り入れたチームがいくつか見られるが、実際のところ成功しているのだろうか。今回は、各チームの主な一番、二番打者の成績をまとめ、その成績がチーム順位につながっているのかを調べてみた。
※成績、順位は2019年7月30日終了時のもの

セ・リーグはトレンドを取り入れたチームが上位


 まずは、セ・リーグから。各球団で今シーズン主に一番、二番で起用された選手をピックアップし、成績をまとめてみた。


●リーグ1位 巨人

 首位を走る巨人は、主に亀井善行が一番、坂本勇人が二番を務めている。ともに打率は3割を超え、本塁打も2ケタと好調だ。特に坂本は本塁打がリーグトップ、打点がリーグトップタイと、恐怖の二番打者っぷりを存分に見せつけている。一番、二番の活躍が順位にも直結しているといえるだろう。ここ数試合は亀井が五番に回り、若林晃弘が一番を務めているが、その若林も打率は3割を超えており、層の厚さをうかがわせる。

・亀井善行の成績
試合:86
打数:286
安打:89
本塁打:10
打点:47
盗塁:6
犠打:1
犠飛:4
打率:.311

・坂本勇人の成績
試合:93
打数:376
安打:118
本塁打:29
打点:71
盗塁:4
犠打:1
犠飛:1
打率:.314

・若林晃弘の成績
試合:41
打数:132
安打:40
本塁打:4
打点:13
盗塁:9
犠打:3
犠飛:1
打率:.303


●リーグ2位 DeNA

 7月は大きく躍進し、首位巨人に4.5ゲーム差の2位まで浮上してきたDeNA。一番は攻守走に優れた神里和毅を主に起用しているが、二番は宮崎敏郎、筒香嘉智、ネフタリ・ソトをといった強打者を据えることが多い。特にチームの主砲である筒香を二番に置いてからは好調で、筒香を本格的に二番に置いた7月15日から28日まで13試合で9勝3敗1分。一気に2位に浮上するきっかけとなった。30日の試合では筒香は四番に戻ったが、このまま二番でもよかったのではないだろうか。

・神里和毅の成績
試合:91
打数:340
安打:98
本塁打:6
打点:26
盗塁:10
犠打:2
犠飛:0
打率:.288

・宮崎敏郎の成績
試合:96
打数:364
安打:100
本塁打:13
打点:43
盗塁:0
犠打:0
犠飛:5
打率:.275

・筒香嘉智の成績
試合:92
打数:318
安打:94
本塁打:18
打点:50
盗塁:0
犠打:0
犠飛:2
打率:.296


●リーグ3位 広島

 一時は11連敗を喫して首位から陥落した広島だが、ここに来て9連勝と再び上昇の勢いを見せている。一番は流動的で田中広輔野間峻祥が務めることが多かったが、最近では主に西川龍馬が任されており、不動の二番である菊池涼介とのコンビでチームを牽引している。二番に強打者を置くというトレンドとは異なるが、西川を一番に置いてから打線は息を吹き返しており、一番打者の重要性をあらためて感じさせる。7月は負け越しとなってしまったが、この調子を維持できればさらに上位に食い込めるだろう。

・西川龍馬の成績
試合:92
打数:337
安打:96
本塁打:9
打点:48
盗塁:3
犠打:9
犠飛:5
打率:.285

・菊池涼介の成績
試合:96
打数:381
安打:101
本塁打:6
打点:35
盗塁:9
犠打:17
犠飛:2
打率.265

ソラーテ(阪神


●リーグ4位 阪神

 今シーズンの阪神は、一番に近本光司、二番に糸原健斗という、巧打タイプが出塁して小兵タイプがつなぐというオーソドックスな布陣で主に戦っている。しかし、チーム総得点がリーグ最下位と、得点力は低い。そこで、新加入のヤンガービス・ソラーテを二番に起用したところこれが大当たり。初出場となった7月26日の試合で二番に起用されて初本塁打を放つと、再び二番に入った30日の試合では決勝本塁打を含む5打数4安打と大活躍。阪神も二番に強打者を置くというトレンドに乗るかもしれない。

・近本光司の成績
試合:95
打数:384
安打:104
本塁打:7
打点:30
盗塁:20
犠打:11
犠飛:1
打率:.271

・糸原健斗の成績
試合:96
打数:340
安打:90
本塁打:1
打点:28
盗塁:3
犠打:8
犠飛:3
打率:.265

・ヤンガービス・ソラーテの成績
試合:4
打数:18
安打:6
本塁打:3
打点:6
盗塁:0
犠打:0
犠飛:0
打率:.333


●リーグ5位 中日

 序盤は首位争いに食い込んでいた中日だが、なかなか浮上のきっかけがつかめず現在5位。7月上旬までは一番に平田良介、二番に京田陽太という打順だったが、7月7日の試合から二番には大島洋平が主に起用されている。平田は規定打席未到達ながら打率.293、大島は打率.317でリーグ3位と、本塁打数は及ばないものの巨人の一、二番コンビと遜色のない成績を残している。ただ、残念ながら7月は8連敗するなどチーム成績にはつながっていない。

・平田良介の成績
試合:65
打数:256
安打:75
本塁打:7
打点:26
盗塁:3
犠打:1
犠飛:3
打率:.293

・京田陽太の成績
試合:92
打数:339
安打:89
本塁打:2
打点:27
盗塁:15
犠打:13
犠飛:1
打率:.263

・大島洋平の成績
試合:94
打数:363
安打:115
本塁打:0
打点:31
盗塁:25
犠打:2
犠飛:2
打率:.317


●リーグ6位 ヤクルト

 打率.303、本塁打13本の成績を残している青木宣親を二番に置くヤクルトも、トレンドに乗っかっているチームだ。一時は首位に立つなど序盤は好調だったが、5月に絶不調に陥ったチームはそのまま最下位まで沈み、現在もAクラス浮上の糸口が見つからない状況。6月14日の試合からは山田哲人を一番に置いてリーグ屈指の一、二番を形成しているが、中日と同じく順位につながっていないのが残念なところ。

・山田哲人の成績
試合:95
打数:348
安打:94
本塁打:23
打点:54
盗塁:23
犠打:0
犠飛:4
打率:.270

・青木宣親の成績
試合:93
打数:347
安打:105
本塁打:13
打点:44
盗塁:1
犠打:1
犠飛:3
打率:.303

 セ・リーグの現状を見ると、巨人、DeNA、中日、ヤクルトの4チームが二番に打力のある選手を置いている。このうち、序盤からトレンドを取り入れていたのは巨人とヤクルトだが、巨人は首位を快走。一方のヤクルトは最下位と極端な結果になっている。ただ、チーム総得点は巨人がリーグ1位、ヤクルトが2位と、トレンドを取り入れた効果は出ているといえるだろう。二番に強打者を置くことで攻撃力が増すのは間違いないようだ。

小兵タイプの二番が多いパ・リーグでは……


 続いてパ・リーグ6球団の一、二番の成績を調べてみた。パ・リーグは日本ハムが二番に強打者を置くことで知られているが、それ以外のチームはどうなっているのだろうか?


●リーグ1位 ソフトバンク

 リーグ首位を走るソフトバンクは、ケガ人が続出したチーム事情もあって打順がなかなか固まらなかった。そんな中で多く二番を担ったのが今宮健太。これまで11本の本塁打を放っているが、パ・リーグ記録のシーズン62犠打を記録するなど純粋な強打者タイプではない。一方、一番は牧原大成が担うことが多いが、打率は.215とリードオフマンとしては心許ない成績。他球団よりも若干見劣りする一、二番だが、そんな状況でも首位を走っているのは、両リーグトップの本塁打数と防御率の影響が大きいだろう。

・牧原大成の成績
試合:73
打数:275
安打:59
本塁打:2
打点:15
盗塁:5
犠打:8
犠飛:1
打率:.215

・今宮健太の成績
試合:67
打数:257
安打:70
本塁打:11
打点:31
盗塁:4
犠打:2
犠飛:0
打率:.272

大田泰示(日本ハム)


●リーグ2位 日本ハム

 かつては二番に小笠原道大を据えるなど、いち早く二番に強打者を置くトレンドを取り入れてきた日本ハム。近年も長打が魅力の大田泰示を主に二番で起用している。一番には高い出塁率を誇る西川遥輝が務め、このコンビで多く得点を上げている。実際、二番の大田はリーグ7位タイの58打点。二番に強打者を置く布陣がしっかりと機能しているといえるだろう。チームもソフトバンクに1.5ゲーム差と、首位の座も見えてきている。

・西川遥輝の成績
試合:95
打数:380
安打:110
本塁打:3
打点:29
盗塁:15
犠打:5
犠飛:0
打率:.289

・大田泰示の成績
試合:85
打数:362
安打:106
本塁打:14
打点:58
盗塁:4
犠打:0
犠飛:4
打率:.293


●リーグ3位 西武

 現在リーグ3位の西武は一番・秋山翔吾、二番・源田壮亮が不動の布陣だ。源田は俊足巧打のバッターだが、どちらかといえば長打よりも「つなぐ役割」を担う選手。強打者を置くというトレンドとは異なるが、それでもチーム総得点は両リーグトップの487点を記録している。源田が本塁打数トップの山川穂高や打率首位の森友哉といったクリーンアップにうまくつなげているからこその数字だろう。

・秋山翔吾の成績
試合:94
打数:382
安打:117
本塁打:14
打点:41
盗塁:10
犠打:0
犠飛:1
打率:.306

・源田壮亮の成績
試合:92
打数:384
安打:105
本塁打:0
打点:28
盗塁:24
犠打:11
犠飛:2
打率:.273


●リーグ4位 楽天

 楽天は過去には長打が魅力の外国人助っ人を二番に置くなど、いち早くトレンドを取り入れていたチーム。今シーズンの序盤は出塁率の高い茂木栄五郎を二番に置いていたが、中盤から茂木を一番にして、二番には島内宏明を据えることが多くなった。島内は今シーズンの序盤に四番を務めるなど長打が魅力で、まさに「二番に強打者を置く」というトレンドのどおりだ。ただ、残念ながら島内が際立った成績を残せていないため機能しているとはいいづらい。ここ数試合は2年目の山崎剛が二番に起用されて結果を残しており、このまま山崎が活躍すれば打線も勢いづくだろう。

・茂木栄五郎の成績
試合:93
打数:380
安打:116
本塁打:10
打点:42
盗塁:7
犠打:2
犠飛:0
打率:.305

・島内宏明の成績
試合:85
打数:329
安打:84
本塁打:7
打点:39
盗塁:1
犠打:4
犠飛:1
打率:.255

・山崎剛の成績
試合:12
打数:15
安打:7
本塁打:1
打点:2
盗塁:2
犠打:3
犠飛:0
打率:.467


●リーグ5位 ロッテ

 パ・リーグでも屈指の一、二番コンビを擁するのがロッテだ。今シーズン主に一番を務める荻野貴司は打率.315でリーグ2位、二番の鈴木大地は打率.310でリーグ4位と、高いバットコントロールを持つ二人が打線を牽引している。二番の鈴木は本塁打も13本とパンチ力があり、まさに「打てる二番打者」だといえる。ただ、チームは5位と成績につながっていないのが残念なところ。主砲のブランドン・レアードも好調だが、投手陣の調子がなかなか上向かないのがこの順位にとどまっている原因ではないだろうか。

・荻野貴司の成績
試合:86
打数:340
安打:107
本塁打:7
打点:33
盗塁:20
犠打:6
犠飛:4
打率:.315

・鈴木大地の成績
試合:91
打数:339
安打:105
本塁打:13
打点:51
盗塁:3
犠打:6
犠飛:2
打率:.310


●リーグ6位 オリックス

 4月27日以降ずっと最下位と、今シーズンこれまでいいところのないオリックス。一番は主に福田周平が務めており、二番は日替わり状態となっているが、多くの場合、大城滉二が起用されている。福田は打率.257、1本塁打、大城は打率.263、3本塁打と、他チームよりも見劣りする一、二番の成績となっている。主砲の吉田正尚がひとり気を吐いているが、チーム総得点も両リーグ最下位の329となかなか打線全体の調子が上がらないのが現状。中日から獲得したスティーブン・モヤを二番に置くなど、大きな改革をしてもいいかもしれない。

・福田周平の成績
試合:87
打数:319
安打:82
本塁打:1
打点:21
盗塁:20
犠打:9
犠飛:0
打率:.257

・大城滉二の成績
試合:90
打数:300
安打:79
本塁打:3
打点:28
盗塁:11
犠打:11
犠飛:1
打率:.263

 パ・リーグの現状では、日本ハムとロッテが「打てる二番」を配している状況だ。日本ハムはチームの順位に好影響を与えているが、ロッテは残念ながらチーム成績に貢献していない模様。ただ、日本ハムはリーグ3位、ロッテはリーグ2位のチーム総得点となっており、セ・リーグと同じく二番に強打者を置くと、チームの攻撃力は上がるようだ。

 現状をまとめてみると、セ・リーグの二番に強打者を置いているチームは1位、2位、5位、6位。一方、パ・リーグは2位、5位となっている。そのため、順位だけでは、二番に強打者を置くことがチーム成績に直結するとは言いがたい。下位に沈んでいるチームはチーム防御率が低いので、その影響も大きいと考えられる。

 とはいえ、早い段階から強打者を二番に置いていたチームは総じて得点力が高いようだ。この考えでいくと、現在はチーム総得点がリーグブービーの中日は二番に大島を置いたことで得点力が増すかもしれない。総得点が最下位の阪神も、ソラーテの起用法次第で得点が増す可能性がある。二番に強打者を置くことの有用性をさらに検証するためにも、中日と阪神の今後の動向に注目だ。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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