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ベースボールゼミナール

左投手は走りづらい? よく走られる左投手がいるのはなぜ?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.左投手がマウンドにいると、一塁ランナーはリードがとりにくく、スタートが切りづらそうですが、プロの世界では左でもよく走られている投手がいます。何か理由はあるのですか。(埼玉県・28歳)



A.左投手だからといって、けん制が得意とは限らない


元中日・井端弘和氏


 左投手のほうがスタートを切りづらいと言われるのは、一塁ランナーに対してマウンド上で正対しているからで、ランナー側に「動きが見られているのではないか」という意識があるからではないでしょうか。見られていると感じると、確かに走りづらいものですが、ただ、左投手だからといって、けん制が得意とは限りません。中にはけん制時のフォームと投球時のフォームが明らかに異なっていたり、軸足(左足)と右足が交差して投げてしまったり、クイックモーションが遅かったりと、走りやすいピッチャーもいて、「左でもよく走られている」のはこういった理由があるからでしょう。

 ランナーとしては、どこかにスキがないかと、常にチェックしていますから、このような走りやすい左投手はすぐに分かるものですし、その情報はすぐにチーム内でも共有されます。プロですから、一度走られると相手も修正をしてきますが、その中でもクセは出てくるもので、間合いや(何秒以上持ったらけん制はないなど)、視線、そういった細かいところまで攻撃側はチェックしたほうがいいですね。

 一方で、左でけん制やクイックなどにスキのない投手ほど、厄介な相手はいません。微妙に間合いを変えて走るタイミングを失わせたり、複数種類のけん制を投げられると、「まだほかにあるのではないか」とランナー側としては考えてしまうものです。クイックモーションが速いと走りづらいのは分かっていただけると思いますが、軸足と右足が交差しないギリギリのところでゆったりと足を上げてホームに投げられるのも嫌なものです。

 同じようにゆったりと足を上げてから一塁けん制を投げられると、余計にどちらか判断がつかなくなりますからね。よく研究している投手はけん制時のフォームと投球時のフォームを似せて、クセを隠す(分からなくする)こともあります。

 もっとも厄介なのがボークすれすれのけん制を投げてくる中南米の左投手です。けん制時に真っすぐに一塁方向に踏み出してくるのではなく、斜め前にステップするので、投球との区別がつきません。NPBだとボークになることが多いですが、国際大会に出ていくとボークをとってくれない場合もあります。今秋のプレミア12、来夏のオリンピックは要注意ですね。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

写真=BBM
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