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週べ60周年記念

巨人・金田正一20年生の新たな決意/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

リリーフ専門は嫌だ


表紙は左から阪神江夏豊村山実



 今回は『1969年2月3日合併号』。定価は60円。
 
 訃報が飛び込んだ夜、今回の号を開いた。

 もしかしたら、と思ったら、
 巻頭から、ねじり鉢巻きでジャンプする写真があった。
千葉県・館山の自主トレ風景だ。キャプションをつけるなら、
「やったるで!」か。

 抱負も語っていた。
「ワシはことし引退をかけた年だと思うんや。15勝できなんだらあっさり野球と縁を切る。もちろん20勝を狙う」

 昭和8年生まれのとり年。1969年、公式戦でプレーすれば、西沢道夫(元中日ほか)、呉昌征(元毎日ほか)と並ぶ20年選手のタイ記録となる。投手専門としては初だ(この2人は投手歴もあるが)。

 プロ2年目の1951年から14年連続20勝以上。65年巨人移籍後に途切れたが、それでも目標とする400勝まで、あと5勝に迫っていた。
 ただし、前年は11勝(10敗)どまり。ヒジの故障にも苦しみ、球威は確実に落ちている。
 周囲からは球数を限定した「リリーフ専門」を勧められるが(血行障害に苦しんだ南海・杉浦忠がしていたことがある)、いまだに「先発完投」にこだわっていた。

「20年目? 冗談じゃない。その言葉はワシは口にせんつもりや。プロ野球選手が年齢を意識すると、ついその気になって老け込んでしまう。ワシは毎年新人のつもりでやる。
 リリーフ転向もいやや。投手のだいご味はなんというても先発完投やで。初めからリリーフ専門なんて考えると、結局はリリーフが精いっぱいのヘナちょこに成り下がってしまう。ワシはいややで」

 負けず嫌いもここまでいくと、感心するしかない。
 今回の自主トレでは毎日2時間走り、例年以上に体をいじめているという。
 掲げたテーマは「革命」だ。
「ワシには自己暗示が必要や。まだやれるんやと自分に言い聞かせるんや。去年はスタミナが切れたが、今年は今から走り込んでスタミナ蓄積を心掛ける。やればやるだけ、自己暗示もかけやすい」

 信条は「人に甘えない」だった。
 20年前にプロ野球の道を選んだのも、その考えからだという。
「ワシは人に頭を下げるのが嫌いやった。若いころからワシという男はそうやった。プロの道は人に頭を下げんでいい代わりに、誰も頼れん。自分の力だけしか頼れん世界や」

 この号には「ロッテオリオンズ誕生話」もあったが、それは次回としたい。

 週べにはインタビュー、連載手記と何度も登場いただいた。当時の記事を読むと、頭の回転の速さ、毒舌ながらユーモアがあり、一線を越えぬセンスのよさがあった。
 何より、ブレない強さには感服するしかない。

 空前絶後の大投手・金田正一。ご冥福をお祈りします。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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