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ベースボールゼミナール

「サードはショートのときほど足を使わない」の意味は?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.大学でショートからサードにコンバートされました。井端さんは現役時代にサードでの出場が増えたころ、「(サードでは)ショートのときほど足を使わない意識」と話していましたが、どういうことでしょうか。また、まだ緩い打球など前に出て行くタイミングがつかめません。コツを教えてください。(山梨県・20歳)



A.素早く、そして細かいステップがサードでは余計な動きに。まずは捕球優先でステップを踏んでスローイングでOK


巨人時代の井端弘和氏


 ドラゴンズでショートを長く守ったあと、ジャイアンツに移籍してサードを守ることが多くなった2014年ごろの話ですね。確かに、取材に対してこのようなコメントをした記憶がありますし、「ショートのときほど足を使わない意識」は確かです。

 というのも、サードを守っているときに、ショートを守っている感覚で打った瞬間に反応してササッっと足を動かすと、いざ捕球姿勢に入ろうとした際、バッターとの距離が短く、かつ打球も速いですから、もう打球が目の前まで来てしまうということが何度もありました。ショートでは打球に素早く反応して、スローイングにつながるように捕球ポジションに入っていく必要があるので、素早く、そして細かくステップを踏むクセが染みついていたのですが、これがサードでは余計な動きになってしまった、ということです。

 表現は難しいのですが、サードを守っているときは、インパクトがあって、「ん」と一呼吸を置いてから動き出すくらいで、実はちょうどタイミングが合います。まずは捕球をしっかりして、ステップを踏んでスローイングでも全然OK。打者からの距離が近いうえに打球も速いですから、十分に時間的な余裕があるということです。

 ただ、サードにはショートと違ってバッターがフルスイングをしているのに、どん詰まりのボテボテのゴロが飛んでくることもあります。質問の方も「緩い打球に対して前に出ていくタイミングが分からない」と書いていますが、まさにこれのことを言っているのではないでしょうか。

 私も初めのころは戸惑いました。バレンティンソフトバンク)のような外国人選手が振り回したときなどは特にそうです。でも、このときも、速い打球に対応するために「ん」と間を置くのは仕方がないと思います。その直後にボテボテだと分かったら、一生懸命にダッシュをして、打球を処理してあげればいいのです。

 このときに注意してほしいのが、「ん」と間を取る際に上半身に力を入れないことです。これは緩い打球も、速い打球も同じで、上半身に力が入ってしまうと次の動きにスムーズに移ることができません。身構えることは必要ですが、上半身はリラックスさせてあげてください。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2019年12月2日号(11月20日発売)より

写真=BBM
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