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慶大を率いた5年間――大久保秀昭前監督がやり残したこととは?

 

昨秋まで母校・慶大を率いた大久保秀昭氏(JX-ENEOS監督)は1月18日、優勝祝賀会で5年間」の思いを500人の前で語った


 1月14日、かつて慶大監督として2期(1960〜65年、82〜93年)にわたり率いた故・前田祐吉氏が特別表彰で野球殿堂入り。表彰者にゆかりのあるゲストスピーチは2期目の教え子にあたるJX-ENEOS・大久保秀昭監督が務めた。

 大久保監督は「主将・捕手」として4年時に春秋連覇。社会人・日本石油(現JX-ENEOS)を経て近鉄でプレーし、現役引退後は指導者の道を歩む。JX-ENEOSでは都市対抗優勝3度、日本選手権優勝1度。慶大では5年間で3度のリーグ優勝へ導き、昨秋は19年ぶりに明治神宮野球大会を制している。前田監督からの教えが指揮官としての原点にあり、生前は身近な相談役でもあったという。「大好きな、大好きな前田さん」と、父のように慕っていた。

 1月18日。東京都内のホテルでの慶大優勝祝賀会に約500人が出席し、盛大に開催された。壇上で旧チームの主将・郡司裕也中日)は「監督と野球がやれて良かった」と感謝の言葉を述べた。もともと、涙腺が緩い大久保監督。直後のあいさつでは涙をこらえ、在任5年間を振り返った。

 各年代の部員の名前を挙げ、丁ねいに回顧。1年1年が勝負で、学生と真正面から向き合ってきた足跡が分かるスピーチだった。集大成の5年目は「郡司の代は言うことがなかった。4年生が脱落することもなく、一人ひとりが役割を全うしてくれた。こんなに幸せなシーズンを送れたのは感無量であります」と話した。

 何よりもうれしかったのは、郡司から出た言葉だった。「そこを求めてきた。そう言ってもらえるような監督になりたい、と。思い残すことはありません」

 とは言いつつも、負けず嫌いの大久保監督。実は、やり残したことがあったという。

「もう1回、10連勝をかけた早慶戦をやりたい」

 昨秋は早大1回戦を制し、開幕9連勝で3季ぶりの優勝を決めた。2回戦。慶大史上3度目の「無敗優勝」がかかった一戦を落としている(3回戦も連敗で9勝2敗、勝ち点4)。慶大のストッキングには、2本の白線が入っているが、この数字こそ「無敗優勝」の回数を意味する。前回は前田監督が率いた1985年秋(10勝1分)であり、大久保監督としては恩師の偉業に並ぶチャンスを逃したのだ。

 後任の堀井哲也監督(JR東日本前監督)へ、その思いを託しつつも「もし機会があるならば、そのときに達成したい」と、再度、慶大監督として指揮したい意欲を見せた。

 将来的な夢を語りつつも、まずは昨夏まで4年連続で都市対抗出場を逃しているJX-ENEOSの再建が急務だ。大久保監督にとって、目の前に置かれたミッションを果たすことが最大のモチベーション。それはもちろん、都市対抗制覇。今年は東京五輪開催により、例年の7月ではなく11月下旬から12月上旬に開催される。変革の時間はある。有言実行の指揮官は再び、社会人野球でリーダーシップを発揮していく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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