このオフ、国内FA権を行使してロッテから楽天に新天地を求めた
鈴木大地に話を聞いた。
2019年は鈴木大にとっていろいろな意味で節目の年だった。開幕スタメンを外れて連続試合出場が532で途切れるという悔しいスタートから、本職ではない一塁でチャンスをつかんでスタメンに復帰。その後もチーム事情に合わせて内野全ポジションにプロに入ってからは初という外野まで守った。
そんな中で打率.288、15本塁打を含めてキャリアハイと言える数字を残し、いつしかただのユーティリティーではない、「スーパーユーティリティー」と呼ばれるようになっていく。そして7月には30歳を迎え、国内FA権を手にした。
「あと何年野球ができるのか、1年でも長くこの世界でやりたいと思っている中で、いろいろな節目が重なったときに、新しいことに挑戦できるのは最後だなと思った」
決断の理由は一つではない。30歳になったこと、30歳を過ぎても成長できる手応えを得たこと、そのタイミングで国内FA権を手にして、新たな挑戦=さらなる成長のチャンスを得ることができたこと……挙げればきりがないだろう。
だが、一つだけ「それは理由ではない」と明確に否定したことがあった。「ポジションを固定してほしいから移籍を決めたわけではないです」。
ユーティリティーと言えば、しかもそこに「スーパー」がつけば聞こえはいいかもしれないが、意地悪な見方をすれば「便利屋」だ。開幕スタメンをつかめず、スタメン出場はしていてもチーム事情でポジションが固定されない、もっと言えばポジションをつかむことができない「便利屋」。打線の中でトップクラスの働きを見せているにも関わらず、そんな扱いを受けていたことに嫌気が差したのではないかという声はあった。
「FA宣言してからも、よく聞かれました。いろいろなポジションを守っていたことも理由ですか、と。でも、僕は本当に素晴らしい経験をさせてもらったと思っています。まさかプロの世界で外野を守る日が来るなんて思っていませんでしたから。こんなに野球を堪能できた1年を過ごした選手は、なかなかいないんじゃないですか」
そして、「昨季の経験が必ず今季につながる」と言葉を続けた。楽天の
三木肇新監督は鈴木大を三塁で起用する構想を持っているが、ハイレベルに複数ポジションをカバーできる鈴木大の存在は、スタメンの選択肢はもちろん、試合でのポジション変更を伴う戦術的交代を含め、指揮官の戦略・戦術の幅を大きく広げるはずだ。
2020年シーズン、果たして鈴木大は新天地でどれだけ野球を堪能することになるのだろうか。
文=杉浦多夢 写真=BBM