「指導法」「熱血漢」「情熱」
横浜高の新監督に就任した同校OBの村田浩明氏は高校時代、涌井秀章(現楽天)とバッテリーを組んだ
横浜高は4月1日、同校OBの村田浩明氏の野球部新監督就任を発表した。
3つのスタイルから「再建」を確信した。
まずは「指導法」。同氏に監督就任を要請した葛蔵造校長は言う。
「新しいコーチング、令和に合った形で指導していかないといけません。いわゆる根性、血の汗を流せとか、そういう時代ではありません。白山高校で選手を育て上げた村田監督に、ラブ
コールを送らせてもらいました」
葛校長は昭和の人気野球漫画のテーマソングの一部を引用して説明。昨年9月、前部長と前監督を暴言、暴力行為により解任させただけに、一連の騒動を反省し、立て直しには並々ならぬ思いがある。昨年10月から延長する形で、この1年間、校長自らが野球部長として陣頭指揮を執っていく構えだという。
次に、生徒へ寄り添う「熱血漢」。
村田氏は横浜高では2年春のセンバツで1学年上の
成瀬善久(BCL/栃木)、同学年の涌井秀章(現楽天)とバッテリーを組み準優勝。涌井がエースだった3年夏の甲子園では、主将として準々決勝へ進出している。
日体大卒業後、保健体育科教諭として霧が丘高で野球部長を4年務め、13年4月、白山高赴任と同時に、監督に就任した。部員わずか4人でスタート。まさしくゼロから一つひとつ積み上げ、18年夏は北神奈川大会8強。強豪私学がひしめく神奈川の勢力図の中、公立校の意地、存在感を示してきた。これも、熱血指導にほかならない。近年は村田監督を慕って、白山高への入学希望者も増えていた。
3つ目は人を思う「情熱」だ。前部長と前監督の解任以降、高山大輝コーチが「監督代行」として尽力。学校からの「力を落とさずに、伝統ある野球部の火を消さないでほしい」との要望を実現させるため、全身全霊を注いできた。村田監督は日体大在学中、当時、高校1、2年生だった高山監督代行(4月1日からヘッドコーチ)をコーチとして指導していた。後輩の苦労を知っていただけに、何とか力になりたい思いが強かった。これが、県立校教諭からの転身を決意した理由の一つだ。
指導者はサポート役に徹する
監督としての根底には「選手ファースト」がある。とにかく、生徒が主役。指導者はサポート役に徹する。
「甲子園出場とか、いろいろな目標はありますが、今は3年生、2年生の子どもたちと向き合うことを念頭に置いています。(夏までの)この3カ月の期間を濃い時間にし、その後で結果がついてくると信じています。『横浜高校に来て良かった!』と思えるように導きたい」
村田監督が発する言葉一つひとつには、温かみがあった。この半年間、名門校を守ってきた高山ヘッドコーチは「やっと、新しい横浜野球部がスタートできる!」と、先輩の監督就任を心待ちにしていた。高山ヘッドコーチとともに、村田監督と白山高で5年半の指導キャリアがある関根剛コーチ(敬愛学園高−日体大)も新コーチとして支えていく。
「教え」に飢えている生徒たち。村田監督のカラーが新生・横浜に根付くのも、そう時間はかからないはず。新型コロナウイルスの感染拡大防止により今後も、日々の活動が制約されることも予想されるという。そんな困難な状況も、村田監督の熱意があれば乗り越えていける。もともと潜在能力の高いエリート集団。心が一つになれば、向かうところ敵なし、だ。新指揮官のタクトから目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=大賀章好