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週べ60周年記念

巨人・柴田勲とラフィーバーのスイッチ談議/週べ回顧

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

ロッテのアリゾナキャンプは消耗戦に


表紙は巨人長嶋茂雄。失礼。間違いでした



 今回は『1971年3月29日号』。定価は100円。

 ベロビーチでの巨人人気は、なかなかのもの。練習試合でも互角以上の戦いをし、王貞治、長嶋茂雄の快打に歓声が飛んだ。
 記事の見出しも、「技術輸入の時代は終わった。巨人の敵は巨人にあり」だ。

 社交辞令もあるだろうが、ラソーダコーチなど、
「巨人に教えること。そんなのないよ。それよりこっちが習いたいくらいさ」
 とにやり。
 特に評判が高いのは、やはり王。F.ロビンソンは、
「あのフラミンゴはワンダフルだ。一流のバッターだ。あんな一本足で、よく全力をぶつけられると感心する。あの技術はとてもわれわれにはお呼びがつかない。きっと大リーグでもホームランダービーを争うだろう」

 アメリカで水を得た魚のように生き生きしていたのが長嶋。日本では限界説もささやかれ、宮崎キャンプではミート中心のハーフスイングをしていたが、ロイヤルズ戦で特大の1号を放つと、
「俺はこちらにきてパワーがついたのかな。よく飛んだな」
 とご機嫌。打撃練習でも、
「よし、俺のパワーを見せてやろう。三振かホームランかでやってやろう」
 とさく越えを連発し、大リーガーたちを驚かせていた。

 柴田勲がのちロッテ入りしたドジャースのラフィーバーにスイッチについて相談した話もあった。柴田の相談は、
「作った左打席のほうが調子を崩すことが多いが、そうすると、どうしても右打席もスランプになってしまう。どうすればいいですか」
 というものだった。
 これに対し、ラフィーバーは、
「左打ちと右打ちはまったく違う人間です。打つ人間は一人であっても、それにとらわれていては左のスランプは右のスランプに通じるでしょう」
 と抽象的な答えを返していた。
 柴田とラフィーバーの話は通訳を介し、2時間ほど続いたが、ラフィーバーは最後、
「柴田さん、あなたほど才能がある人がスランプを気にし過ぎるなんて変です。自分は必ず打てるんだと信じ込んで打席に立ちなさい」
 と言った。

 ラソーダらの言葉は歓迎も込めての社交辞令だろうが、加えればドジャースは、そういうポジティブな指導を選手に対し行い、選手にも浸透している、ということだろう。
 
 対してアリゾナのロッテは誰が組んだのが、毎日のように試合、試合。メンバーが限られている中、ダブルヘッダーもありとすさまじい。
 乾燥した砂漠に囲まれ、経験のない強烈な静電気や慣れない食事もあって、ロッテナインの疲労もかなりたまっていた。
 有藤は、
「23試合やることは覚悟していたのだが、これほどつらいとは思わなかった。早く帰って体づくりをやり直して打ち込みをもっとやらなくては本番が不安だ」
 と話していた。
 
 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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