今季は勝負強さを発揮している梅野
今季好調の
阪神を支えるのが捕手・
梅野隆太郎だ。扇の要として好リードで投手の力を最大限に引き出す一方で、今季は力強いバッティングでもチームに貢献。特にチャンスの場面での勝負強さは驚異的で、5月25日現在での得点圏打率はなんと.500。リーグ2位の
ジェフリー・マルテが.375なので、梅野の数字がいかに傑出しているのかが分かるだろう。今回は、梅野が好成績を残している得点圏打率の「歴代最高記録」や、同じ捕手の最高記録について調べてみた。
※1970年以降の得点圏打率が対象 歴代最高は落合の.492
2度目の三冠王を獲得した1985年、得点圏でも数字を残した落合
シーズン得点圏打率は、1985年に
落合博満が記録した.492が歴代最高だ。この年は122打数訪れたチャンスで60安打(うち本塁打16本)をマーク。98もの打点を挙げている。落合の打率は.367で、得点圏打率とは1割以上もの差があった。それだけ「チャンスに強かった」のだ。ちなみに1985年は首位打者、最多本塁打、最多打点で2度目の三冠王になったシーズンで、打点は現在もパ・リーグの最多記録。翌1986年も三冠王になり、1985年以降では最高となる出塁率.487をマークしたが、1985年のバッティングはそれ以上にすさまじいものだった。
1985年の落合に次ぐのが
王貞治が1973年に残した.475。打率.355、51本塁打、124打点で自身初の三冠王になった年でもあった。打率と得点圏打率との差は.120と、こちらもチャンスでの強さは圧倒的。さすが王貞治といったところだろう。
歴代1位の落合、2位の王を超える「打率と得点圏打率との差」を記録したのが、1981年の
大杉勝男(
ヤクルト)だ。この年のシーズン得点圏打率は.469で、落合、王に次ぐ歴代3位の数字だが、打率は.343だったので得点圏打率との差は.126もあった。僅差ではあるが、チャンスでの強さは落合、王以上だったのだ。
2019年には西武・森が4割超え
捕手として史上4人目の首位打者に輝いた2019年、得点圏でも力を発揮した森
梅野と同じ捕手ではどうだろうか? シーズンを通して出場した捕手のシーズン得点圏打率を調べたところ、
西武の
森友哉が2019年にマークした.411が最高だった。この年の森は打撃絶好調で、打率.329、162安打、23本塁打、105打点をマーク。プロ野球史上4人目となる捕手での首位打者にも輝いた。それ以外の捕手でシーズン得点圏打率4割超えは0人。首位打者になった
古田敦也や
阿部慎之助も、そのシーズンは得点圏打率4割を超えることはできていない。
また、阪神の選手では1991年に
和田豊が記録した得点圏打率.433が最高で、次いで
今岡誠の.427(2003年)、
トーマス・オマリーの.426(1994年)という順になっている。この3人の中で「打率と得点圏打率との差」が最も大きかったのが和田。打率は.298と惜しくも3割に達しなかったが、チャンスでは打率を.135も超える数字を残すなど、非常に勝負強かった。もし梅野が4割超えでシーズンを終えた場合は、チームとしては18年ぶり。意外と「久しぶり」の記録となる。
「得点圏打率」について紹介したが、歴代最高は落合博満が記録した.492なので、梅野が得点圏打率5割を維持したままシーズンを終えるとなんと歴代トップになる。また、捕手として、阪神の選手としても歴代最高と、達成した場合は記録尽くしだ。無論、シーズンはまだ残り約3分の2も残っており、守備の要である捕手は負担も小さくないため、得点圏打率5割のままシーズンを終えるのは至難の業。どこまで高い数字を維持できるのか分からないが、久しぶりのリーグ優勝を果たすためにも、梅野の勝負強いバッティングに期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM