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コンディション面では圧倒的に不利なJR東日本が勝利。野球の奥深さを感じた一戦

 

最多7試合目の超過酷日程


JR東日本は東京地区第4代表で12年連続の都市対抗出場。就任2年目・浜岡監督のベンチワークが光り、選手の手で神宮を舞った


 たかが野球、されど野球。

 野球とは、奥が深い。毎日の積み重ねこそが大事。ゲームにおいては目の前の1球、1球に集中する。ジタバタしても、始まらない。

 JR東日本を率いて2年目の浜岡武明監督(駒大)は試合前、選手たちにこう言った。

「今までやってきたことを信じて、今日はたかが野球と思ってやろう、楽しんでやろう!!」

 明治安田生命との第4代表決定戦(10月12日、神宮)は、都市対抗の東京地区最後の1枠をかけた大一番だった。

 誰が見ても、明らか。コンディション面では、JR東日本が圧倒的に不利な状況にあった。

 前日11日、セガサミーとの第3代表決定戦は3対3のまま9回を終えた。延長に入っても、一進一退の攻防が続き、双方とも決定打が出ない。だが、タイムリミットが刻一刻と迫っていた。「23時を過ぎて、新しいイニングには入らない」との大会規定により、18回が最後の攻防となったのである。

 セガサミーは18回表、ソロ本塁打で勝ち越し。JR東日本は3対4で敗れた。試合時間は5時間18分に及び、時刻は23時17分を指していた。心身の疲労は極限に達していた。就寝したのは朝3時。JR東日本は8日の第2代表決定戦(対NTT東日本)でも、延長10回の接戦を落としていた(2対3)。中2日の第3代表決定戦で、東京ドーム切符を是が非でも獲得したいところではあったが……。第4代表決定戦は、翌日の18時プレーボール。今回の二次予選に駒を進めた8チームで、最多7試合目の超過酷日程だった。

 一方、明治安田生命は待ち受ける側だった。敗者復活4回戦で鷺宮製作所に勝利(1対0)したのは9月29日。中12日と休養十分で、今予選5試合目とJR東日本とはスケジュール面で、あまりにも対照的であった。

「32番目の代表で、本戦では一番になる!!」


 しかし、ここまで来れば、勝ちたいという気持ちが上回ったほうが勝つ。JR東日本が延長10回、5対4で競り勝った。粘って、粘って、粘り抜いたのだ。浜岡監督は言う。

「(8チームのトーナメントの予選を)3連勝して第1代表が一番良いですが、最多の7試合、こんなにきつい試合をやって第4代表を勝ち取ったことは価値がある。チームにとって大きな力になる。本大会ではもう、怖いものはないので、思い切ってぶつかりたい」

 浜岡監督は神宮の杜を舞い、くっきりと明暗が分かれた。「あと1勝」で出場を逃した就任1年目の明治安田生命・岡村憲二監督(専大)は悔しさをにじませた。中12日。前夜からのボルテージが最高潮に達していたJR東日本に対して、明治安田生命は試合勘の部分で、少なからず影響が出たかもしれない。

「日程面の優位性」について聞いても、岡村監督はそれについては明言を避け、目の前の敗戦を真正面から受け入れていた。

「力負け。気持ちと気持ちのぶつかり合いで、勝たなければならない試合だった。こういう勝負に勝てるチームにしないといけない。勝負の厳しさをあらためて感じました。監督の力の差が出た」。3時間24分、全力で戦った選手たちを称え、すべての責任を背負っていた。

 JR東日本の東京第4代表の決定により、都市対抗出場32チームがすべて出そろった。浜岡監督は試合前、こう発破をかけていた。

「32番目の代表で、本戦では一番になる!!」

 JR東日本は2011年以来、2度目の黒獅子旗奪取が、最大の目標だ。背伸びすることなく日々、できることを、ひたむきにこなす。積み上げた力を結集させ、11月28日に開幕する本大会では、頂点まで5試合を勝ち上がる。

文=岡本朋祐 写真=井田新輔
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