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杜の都仙台でのロッテ─日拓遺恨試合第2ラウンド/週べ回顧1973年編

 

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エースのジョー、城之内邦雄が復活


この日は真ん中の青



 今回は『1973年8月20日盛夏特大号』。定価は120円。

 8月4日、仙台でのロッテ─日拓戦。前期のロッテ─太平洋に続く“新遺恨試合”とも言われたカードだ。

 日拓の先発はロッテ・金田正一監督の実弟、留広。後期開幕戦ではロッテ相手に完封勝利を飾った男だ。

 しかし、この日はパッとせず初回から失点。途中交代となった。

 留広の登板中、金田監督は珍しく静か。一塁コーチャーズボックスでも、いつものアクションはほとんどなかった。

 ただし、弟に客席のロッテファンからヤジが飛ぶと、そちらを向いて手で「よせ」と少しコミカルなジェスチャー。それでどっと沸いて、次のヤジが飛ぶと、今度は口にチャックをするジェスチャー。これでまた沸く。

 年齢が離れていたこともあり、金田監督は兄というより父親のように接していたとも聞く。ほんとに心配なのと、パフォーマンスの両方があったのだろう。

 日拓・土橋正幸監督は言う。

「兄と弟。心情的にはやりにくいのは分かる。しかし両方ともこの世界で生きる男。勝負の世界とは、そんなに甘いものではないはずだ。兄に育てられた弟なら、その兄に勝つことが、何よりの恩返しになるのではないか」

 留広が降りた6回以降はカネやんもパフォーマンス全開。投手の木樽正明がタイムリーを打てば、一塁で木樽のヘルメットと自分の帽子を持って客席に向かい、バンザイ。

 結局、ロッテは3点差で勝利。7投手、20選手の総動員だった。

 この日、日拓のブルーのユニフォームも話題となった。

 スタンドの受けはまずまずだったが、金田監督は、

「なんやあの色は。張本なんか似合うわけないやないか。だいたい土方や、あいつは。俺が馬喰いうんやからな。俺がそうなら土方やないか。土方がブルーなんか似合うわけないで」

 選手兼任ヘッドコーチとなった張本勲は後期開幕前、

「走れ、走れと馬みたいに選手を走らす。まるで馬喰のようなもの」

 と言ったのを受けてだった。

 試合前、巨人で引退し、来季からのロッテとの選手契約が決まっていたエースのジョーこと、城之内邦雄がブルペンで投球練習を行った。実は本職であるラジオ解説者として仙台入りしていたところを金田監督に言われ、ユニフォームを借り、練習に参加したものである。

「ブランクがあったいうても並みのピッチャーとは違うで」

 この日のカネやんは試合前も試合後も上機嫌だった。

 ただ、先立つ7月31日から平和台で行われた太平洋戦はずっと仏頂面。コーチスボックスにも一度もたっていない。

「ワシが出るとファンを刺激する。ワシが出ればファンに火がついて、客は入るやろ。が、ワシはやらん」

 と金田監督。あまりのヤジのひどさにベンチの上に向かって、そのヤジの男に砂をぶっかけ、そのファンがカネやんの迫力に圧倒され、引きさがるという一幕もあった。

「太平洋はやり方が下手だ。もう少しうまくやればスタンドは満員になる」

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM
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