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【MLB】メジャーの歴史に刻まれた大谷翔平のバーチバット

 

歴史的なリアル二刀流のシーズンを送った大谷のバットがアメリカ野球殿堂に展示されている。それだけ偉業を成し遂げたシーズンだったことを証明している[写真提供=Milo Stewart Jr./National Baseball Hall of Fame and Museum]


 白球の痕跡が生々しい「大谷翔平 GOLDSTAGE BIRCH」の2本のバット。アメリカ野球殿堂に寄贈されたものだ。一本は2021年4月4日のホワイトソックス戦、投手で先発しながら二番を打つ初のリアル二刀流の試合。1回表101マイルの剛速球を投げ込み無失点に抑えたあと、その裏、ディラン・シース投手の97マイルの高めの真っすぐを、21年から使用し始めたバーチ材のバットでとらえ、弾丸ライナーで右中間スタンドに突き刺した。

 折れているもう一本は4月16日のツインズ戦に二番DHで出場したときに使用したもの。ジャッキー・ロビンソンデーで背番号は42だった。6回無死一塁、ランディ・ドブナック投手の86マイルの内角低めチェンジアップに芯を外されバットが折れたが、緩いライナーとなってセンター前へ。一塁走者のデビッド・フレッチャーが好判断で三塁へ、中堅手が三塁に送球するのを見て大谷も二塁を陥れた。ベース上で両手を突き上げ満面に笑みを浮かべている。

 ニューヨーク州クーパーズタウンにあるアメリカ野球殿堂博物館は1939年6月に設立、顕著な活躍をした選手や監督、野球の発展に大きく寄与した人物を讃えてきた。ワールド・シリーズ中、副館長のジョン・シェスタコフスキーさんは目を輝かせながらこう説明してくれた。

「今季(21年)の大谷の活躍は、私がメジャーのフィールドで見ることはないと思い込んでいたもの。2018年も先発投手とDHでそれぞれに活躍し素晴らしかったが、今季はリアル二刀流でシーズンを通してプレーした。私は、大谷は野球の歴史の中で長く語り継がれていくべき存在だと確信している。そこで彼に使用した野球道具の提供をお願いしているが、すでに頭のてっぺんから足のつま先まで、物惜しみせず、協力し続けてくれている。心から感謝している」

 21年シーズンについてはほかにも、7月12、13日のオールスター・ゲームで使用したスパイク、フットガード、ハンドガードを寄贈。それ以前にも18年シーズンに使用したバッティングヘルメット、ヒジ当て、ヒザ当て、そして4月1日の投手デビュー戦でかぶった野球帽がある。

 筆者は4度野球殿堂を訪れた経験があるが、展示の中に「WHOLE NEW BALLGAME」というセクションがある。1970年から今に至る、野球界の新しい流れを年表と共に記録したものだ。展示は2015年に始まり、ポップアートの旗手アンディ・ウォーホルの描いた300勝投手トム・シーバーのポスター、レッドソックスのカールトン・フィスクのワールド・シリーズ第6戦のサヨナラ本塁打のバットなどを陳列、あるいはDH制の導入、選手会の力でMLBの労使関係が劇的に変わったことなど、史実を資料とともに分かりやすく説明している。

 そこに大谷の偉業が新たに加わった。「4月4日のバットとオールスター戦のスパイクを陳列させてもらっている。彼は二刀流で球界に大きなインパクトを与え、文字どおり『WHOLE NEW BALLGAME』だった。子どもから大人まで多くのファンをエキサイトさせ、野球人気を高めた、大谷が先駆者となり今後球界に二刀流選手が増えることを期待している」と話していた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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