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プロ野球はみだし録

キャンプの恒例? 開幕を前に注目され続けた“ドカベン”香川伸行の「数字」とは【プロ野球はみだし録】

 

永遠の96キロ


南海で貴重な全国区の選手だった香川


 頭のサイズは59センチ、足のサイズは26センチ、胸囲は110センチ。ウエスト97センチ、ヒップ100センチで、身長は170センチ、そして体重は96キロ。1980年代の南海(現在のソフトバンク)で“ドカベン”の愛称で親しまれた香川伸行の“スペック”だった。漫画の主人公が現実世界に飛び出してきたような体格で人気を博した香川。前述の数字で、体重だけが「?」という向きも多いのではないか。確かにドラフト2位で入団した80年には「96キロ」にも思えたが、80年代も中盤に入る頃には、軽々と100キロを超えていたようにも見えた。誰しも体重の増減はあるものだ。だが、香川の公称はプロ入りから引退まで「96キロ」だった。

 しばしば、野球は「数字」のスポーツといわれる。打率も防御率も、優勝を決めるチームの勝率も、複数の数字から計算されるものであり、プロ野球のペナントレースとなれば、こうした数字に注目が集まっていくものだ。一方、開幕の前は、オープン戦であっても、さまざまな数字に無頓着とまではいわないまでも神経質でもなく、ましてや春のキャンプでは、なかなか数字の話題にならない。

 長いプロ野球の歴史において数少ない例外が香川だろう。厳密にいえば、注目を集めたのは数字というよりダイエット。当時の南海は成績もさることながら、人気も低迷。巨人戦のテレビ中継が黄金期を迎え、プロ野球に詳しくない人でも巨人の選手なら知っているような時代だったが、南海は「漫画で知っている」という人も実際にいた。彼らには『ドカベン』と『あぶさん』の混同もあったのかもしれないが、香川は南海にあって貴重な全国区の選手だったのだ。こうした事情もあり、香川のダイエットは毎年のように春のスポーツ紙をにぎわせていた印象がある。ただ、やはり公表される体重は、いつも「96キロ」だったのだが……。

 ジャンルなどにもよるだろうが、漫画は時間が止まっていても成立する夢のある世界。現実には時間の流れは非情なものだが、香川の活躍も、ひと昔前の物語だ。「永遠の96キロ」というのも、どこか夢のある世界だったようにも思える。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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