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ベースボールゼミナール

コントロールの悪いピッチャーをどうリードしたらいい?/元中日・中尾孝義に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.コントロールが悪いピッチャーをどうリードしていけばいいのですか。ミットを動かして、できるだけストライクと思ったら「動かし過ぎ」とコーチに怒られてしまったのですが、どうすればいいのでしょう。(千葉県・匿名希望・15歳)


中日時代の中尾氏


A.プロでも100パーセント、要求どおりに投げられるピッチャーはいない。2ストライクまでは、あまりコースに寄らないようにするのも手

 キャッチャーのサインどおり100パーセント投げられるピッチャーはプロでもいません。私が受けた中で一番良かったのは、巨人時代の桑田真澄(現コーチ)でしょうか。完全な逆球はほとんどなく、ブルペンでは8割は構えたところに来ました。試合ではさすがに7割くらいでしたが、調子のいいときは8割近くのときもあります。

 少し脱線しますが、技巧派=制球力が良い投手、と思われるかもしれませんけれど、私は少し違う印象を持っています。例えば中日時代に受けた牛島和彦は、非常に投球術が高い投手ではありますけれど、実はそれほどコントロールが良かったわけではありません。彼の技術の高さは、腕の振りが真っすぐ、カーブ、フォークと全部一緒だっただけでなく、腕をしっかり振って遅い球、振らないで速い球を投げることができたことです。逆に言えば、同じような球速の球を、腕を振ったように見せながら投げたり、ゆったりしたように見せて投げたりができたということです。あとはバッターに打ち気がないとなると、平気でど真ん中に遅い球を投げる度胸ですね。

 話を戻します。特に立ち上がりは逆球が来たり、コントロールが落ち着かないピッチャーはたくさんいます。その場合、私は2ストライクまでは、あまりコースに寄らないようにしました。真ん中付近に構えたら投手も楽になるし、球が勝手に散るだろうという感覚です。選手のタイプにもよりますが、あれこれ言っても委縮して、さらに制球を乱すことがありますからね。ただ、2ストライクからの勝負球は、状況にもよりますが、コースに早めに寄って「的」になってあげるようにしました。

イラスト=横山英史


 ミットを動かすことは最近ではフレーミングと言いますが、完全なボール球はそのままでいいと思います。動かし過ぎると逆に取ってくれないこともありますしね。ただ、確かに際どいコースがストライクになることでピッチャーが生き返ったり、逆にボールと判定され、ずるずる崩れることもあります。

 まず考えるのはミットが捕球時、動かないことです。そのため私は体の内側に入れるキャッチングを心掛けました。これは捕ってから動かすのではなく、ボールの軌道を予測して少し先回りして捕るイメージです。これができるようになるためは、そのピッチャーの球の軌道を知ることが重要です。試合で組んだだけでは分かりませんので、ブルペンでたくさん捕って覚えていってください。

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2022年2月7日号(1月26日発売)より

写真=BBM
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