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バット選びでこだわっていたことは?「多いときは7種類のバットを使い分けた」/元巨人・岡崎郁に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代、勝負強いバッティングで球場を沸かせた、元巨人岡崎郁氏だ。

Q.現役時代のバット選びについて、こだわっていたことはありますか。(千葉県・40代)


体の状態に合わせて使い分けるなど、バットには特にこだわりがあった岡崎氏[写真は1994年]


A.バランスの良さを一番に考えていました

 バット選びで最も重視していたのはバランスですね。振りやすくて、軽く感じるバットを選んで使っていました。

 バットは重量が同じでも重心の位置や形状によって重さの感じ方がまったく異なります。脳は優秀なので、重く感じてしまうと、それに耐えようとして無意識に力が入ってしまいます。余分に力が入ることを避けたかったので、軽く感じるバットを探していました。現役時代はほかの選手のバットを借りて、素振りをしてみて、自分に合うものを探したりもしていました。

 バットの種類ですが、シーズン中でもいくつか使い分けていました。年齢を重ねるにつれて体のバランスが変わるのはもちろん、シーズン中も体の状態は日々変化していきます。開幕直後とシーズン終盤では疲労度も違うので、たまっていく疲れとともにバットを変えて試合に臨んでいましたね。

 最終的には1年で7種類のバットを使い分けていました。A〜Gまでの7つのバットがあって、ざっくり言えばAが「長くて重い」、Gが「短くて軽い」。毎年シーズンオフに工場に行って職人さんと相談しながら作ってもらっていました。その際に、「職人さんが考える一番いいバットを作ってください」とお願いして作ってもらったのがAのバット。しかし長くて重いので、使いこなすのに苦労していたという思い出です。

 キャンプで最初に使うのはAのバット。シーズンが進むにつれて疲れてくるとバットが振れなくなるので、夏場にはCやDを使って、終盤の9月にはGを使っていました。ですので、春先はAとBのバットのみを発注していましたね。

 疲れがたまり、体力も落ちるにつれてAからGへとどんどん「軽くて短い」バットを使うことになるのですが、途中で逆戻りすることはしない。なので自分の中ではどれだけ長くAのバットで続けられるかが勝負でした。

 ほかの選手がどうかは分かりませんが、1年で7種類のバットを使うというのはなかなか珍しいのではないでしょうか。わがままな注文に対応していただけたのも、バット工場の方々との関係が築けていたからこそだとも思います。

 さすがに私の7種類は多いとは多いとは思いますが、ほかの選手でも数種類は使い分けていたのではないでしょうか。市販で売られているプロ野球選手モデルのバットは1選手につき1種類ですが、実際はそんなことはないはず。4月と9月では状態が違いますし、同じバットを使い続けるというのは考えにくいと思います。

 シーズン中にバットを変えるというのは、大胆な行為と思われるかもしれませんが、当時はそんなことを思わずにプレーしていました。「重いな」と感じるバットを使って打席に立つことのほうが私にとっては不安でしたね。

●岡崎郁(おかざき・かおる)
1961年6月7日生まれ。大分県出身。右投左打。大分商高から80年ドラフト3位で巨人に入団し内野手としてプレー。96年限りで引退。現役生活16年の通算成績は1156試合出場、打率.260、63本塁打、384打点、23盗塁

『週刊ベースボール』2022年8月29日号(8月17日発売)より

写真=BBM
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