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必死に「運命の日」を迎えた早大・飯塚脩人。侍ジャパンU-18代表相手に無失点の復帰登板

 

右肩の不調に悩む日々


早大の3年生右腕・飯塚は9月3日、侍ジャパンU-18代表との練習試合で1回無失点に抑えた


 早大・小宮山悟監督は、侍ジャパンU-18代表との練習試合(9月3日)が決定した今春のリーグ戦終了直後、飯塚脩人(3年・習志野高)に約3カ月後の登板を打診していた。

 飯塚は高校3年春のセンバツで準優勝を遂げ、夏の甲子園にも出場した。高校日本代表では大船渡高・佐々木朗希(ロッテ)、星稜高・奥川恭伸(ヤクルト)、興南高・宮城大弥(オリックス)、創志学園高・西純矢(阪神)ら錚々たるメンバーと一緒にプレーし、貴重なリリーフ投手として活躍した。U-18W杯(韓国)では4試合に登板して、6回で防御率0.00。自己最速を3キロ更新する151キロをマークし、国際舞台で躍動した(チームは5位)。

 早大でのリーグ戦登板は2年春の1試合のみで、以降は右肩の不調に悩む日々が続いた。一進一退の体調が続く中、小宮山監督は飯塚に対して「いつになったら、投げられるんだ?」と、アプローチを続けてきた。すでに、投球できる体にはあったが、なかなかあと一歩を踏み出せずにいたという。そこで、指揮官は「危機感」を植え付けさせるために「予告登板」という形で、打開策に出たのである。指導者側から「発奮材料」を提供したわけだ。

 9月3日に向けて、飯塚は必死に調整した。夏場には1イニング限定でのオープン戦3試合を経て、いよいよ「運命の日」を迎えた。

 5対0とリードした7回表から5番手で登板。先頭打者の初球に死球と不安な立ち上がりだったが、後続3人を抑えた。二死からは高校通算67本塁打の高松商高・浅野翔吾(3年)をストレートで空振り三振に斬った。この試合は7イニング制で、試合の最後を締めている(8回は無死一、二塁からのタイブレークの練習で2失点)。飯塚は試合後に言った。

「制球力、スタミナ、ボール一つひとつをとっても課題ばかり。高校生はまだ、木製バットに慣れていない。順応していたら安打、本塁打にされていたかもしれません。無失点でも、評価されるものではありません。改善する部分ばかり。ただ、ゲームで投げられたことは、一つレベルアップしたとは思います」

 この日はスピードガンによる計測はなかったが、本人によれば、ストレートは145キロほど出ていた手応えがあった。飯塚の真っすぐはスピンが利いており、打者の手元で伸びる。数字以上にキレがあり、実戦感覚さえ戻れば、球質はナンバーワンであると、チーム関係者の誰もが認める。確かに、浅野に対しての2つの真っすぐの空振りは、完全にタイミングを外していた。飯塚は「この世代で一番と言われる打者を抑えられたのは、良かったです」と控えめに話した。変化球はスライダーも鋭く曲がり、この日は投げなかったがフォーク、チェンジアップも持ち球としてある。

「何が何でもプロに行く」


 3年前、自らがプレーし、育った高校日本代表との練習試合で「良いきっかけをつかんだ」と充実の表情を浮かべた。とはいえ、ようやくリーグ戦メンバー入りへの競争の場に立ったに過ぎず、小宮山監督も「まだ、信用していない」と期待するからこそ、厳しい言葉を並べる。飯塚は3年秋のシーズンを控える。

「あとがない……。卒業まで残り3シーズン、しっかり投げないといけません。痛いとかはもう、言ってはいられない。右肩を痛めて、自分の体と向き合えるようになりました。いつも、練習に付き合ってくれた土橋(恵秀)トレーナーに、結果で恩返ししたい。大学に来て良かった、と言うためにも、何が何でもプロに行く。チームの勝利のために、目の前にあるテーマを突き詰めていきたいです」

 現状、万全からは50パーセントのコンディションだという。約半分のパフォーマンス力で、あれだけのボールが投げられるわけだから、やはり、期待をせずにはいられない。9月10日に開幕するリーグ戦。飯塚の神宮での「完全復活」のマウンドを、心待ちにしている。

文・写真=日本雑誌協会代表取材
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