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首都大学リポート

甲子園での“日本一を知る男”武蔵大・秋元響 存在感を発揮する1年生【首都大学リポート】

 

新しい環境にもなじんで


武蔵大の1年生・秋元は早くも存在感を発揮している


【4月16日】一部リーグ戦
桜美林大5−2武蔵大
(桜美林大2勝1敗)

 首都大学リーグ第3週1日目。武蔵大は第1週で1勝1敗だった桜美林大3回戦に臨んだ。序盤からミスが失点に絡む苦しい展開。終盤、追い上げるも突き放され、惜しくも2対5で勝ち点を逃した。

 2カードを終え1勝4敗。勝ち点ゼロと苦しい状況となったが、そんななかで大きな期待がかけられているのがルーキーの秋元響(1年・仙台育英高)だ。

 秋元は昨夏の甲子園で初めて東北へ深紅の大優勝旗をもたらした仙台育英高の主力としてプレー。全5試合に二塁手で先発出場し、打率.381(21打数8安打)、聖光学院高との準決勝では4安打2打点の活躍だった。

 高校時代の恩師・須江航監督からはこう言われた。

「『どんな投手でも打てる選手』とバッティングを評価していただいていたのですが、自分は見てしまうところがあるので『常に準備をして振りにいく』ように指導されていました。大学ではさらにピッチャーのボールの質が上がっているので大事だと感じています」

 武蔵大を志望したのは昨年3月頃。「当時は野球をどれだけ続けられるのか分からなかったので、就職することも見据えて周囲から評判が良かった武蔵大に決めました」。早々に決断したこともあり、インターネットを通じて試合を観戦することもあり「得点を奪う術がいろいろとあって、打つだけじゃないんだと思いました」と印象を語っている。

 野球部に入部後は「武蔵大は選手の自主性を重んじるのですが、高校時代も須江監督から『自分でやりなさい』と言われていたので、大学でも同じことができる環境だと感じました」と、新しい環境にも馴染んでいる。

 ただ、一方で「高校ではプレーによって一喜一憂していましたが、武蔵大ではずっと声が出続けていて、ベンチの質が違いました」と話す。また、「キャッチャーが『ストレート』とつぶやいたのに、変化球を投げられたことがありました」とささやき戦術で惑わせてくることに驚いたという。

 さらに戸惑ったのが、バットについてだ。

「高校時代は金属バットでしたが、大学で木製になり、バランスが違うように感じました。これまでどおりにスイングするとヘッドが落ちてボールに遅れてしまう感覚があったので、上から叩き気味に振るようにしています」

 指導にあたる山口亮太監督も「秋元は逆方向に強い打球が打てる選手で、選球眼も良い」と評価しており、秋元自身も「逆方向への打球は小学生のころから強い打球が打てるように意識して練習してきました。選球眼についても自信があります」と話しており、甲子園での一番の思い出を聞いたときも「明秀日立高との3回戦です。終盤まで負けていて、自分も2三振で良いところがなかったのですが、粘って四球を選んで出塁したときに流れを引き寄せた感覚がありました」と話すほどだ。

自分らしさを発揮して


 今春の開幕カードとなった桜美林大1回戦では九番・二塁でリーグ戦初先発。高校時代は好守でならしたが「打球が飛んできた瞬間に硬くなってしまいました」とエラーを記録。バットでも初打席は三振だったが、名誉挽回の機会は4回表の第2打席で訪れた。一死一、三塁のチャンスで打席に立つと「ミスを取り返そうと思っていました」と右中間へ2点適時三塁打を放った。

「会心の当たりではなかったのですが、外野が前に出てきていたので『抜けろ』と思っていました」

 この一打に山口監督も「今日は打てて良かったですね」と親心を見せていた。また、ミスをした守備について秋元は「甲子園では絶好調だったのですが、あのときの感覚を忘れてしまいました。でも、これから思い出します」と表現し、問題ないことをアピールしていた。

 桜美林大3回戦では出塁率の高さから二番に抜擢され、指名打者で先発。しかし、4点のリードを許し、しかも相手投手に6回までノーヒットに抑えられる重苦しい展開。そんななか7回裏の先頭打者として登場した秋元はフルカウントからのストレートを強振し、レフトの頭上を越す二塁打を放った。チーム初安打にも「仙台育英高では『負けている場面で打てないと意味がない』ということでチームとして、いつも負けている状況を想定してバッティング練習をしてきました。そうやって普段から集中力を養ってきたんです」と事もなげに話していた。

 さらに9回裏にも四球を選び、2度目の出塁。チームは敗れたが、そのなかでも自分らしさを発揮してみせた。今後については「フォアボールを狙うのではなく、ヒットを狙っていって、その結果、ヒットと四球のどちらも増やしていきたい」と目標を挙げている。

 開幕直後は「首都大学リーグで優勝して神宮球場(全国大会)で勝てるチームになりたい」と抱負を語っていた秋元。武蔵大はリーグ優勝の経験がないが、秋元も「自分の力で優勝させるつもりで来ました」とも話している。甲子園での日本一を知る男が、どのような化学反応を起こしていくのか注目だ。

文=大平明 写真=BBM
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