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FAの人的補償で移籍して覚醒 「球界を代表する守護神」になる可能性秘めた右腕は

 

ソフトバンクでは6年で未勝利


11.77と高い奪三振率も守護神として武器となる田中正


 将来を嘱望された素質が7年の月日を経て、新天地で開花の時を迎えている。日本ハム田中正義だ。5月7日の楽天戦(エスコンF)で同点の9回にマウンドに上がると、小郷裕哉太田光山崎剛を三者連続三振。150キロを超える直球、130キロ台のフォークで打者を圧倒する投球が試合の流れを引き寄せた。直後に上川畑大悟がサヨナラ中越え適時二塁打を放ち、田中正がプロ初勝利をマーク。笑顔でナインとハイタッチを交わした。

 ドラフト1位で5球団が競合した剛速球右腕だが、ソフトバンクに在籍した6年間は未勝利。ほかの投手がうらやむ高い能力を持ちながら、右肩、右肘痛と度重なる故障でファーム暮らしが長かった。2021年に18試合の救援登板で防御率2.16の好成績を残してさらなる飛躍が期待されたが、昨年は2月の紅白戦、対外試合で好投を続けて先発ローテーションをつかむかに見えたが、開幕直前に右肩の違和感で戦線離脱。8月に救援で一軍のマウンドに戻ってきたが、新型コロナウイルスの陽性反応を受けて1カ月も経たずに離脱。5試合の登板に終わった。オフに複数球団の争奪戦となった近藤健介がソフトバンクへFA移籍したのに伴い、人的補償で日本ハムに移籍した。

やりがいのあるポジション


 北の大地で再スタート。期する思いは強かっただろう。オープン戦7試登板で防御率0.84と結果を残し、開幕一軍入り。セットアッパーとして開幕から好投を続けると、石川直也が左内転筋付着部肉離れで戦線離脱したため、守護神に抜擢される。4月21日の楽天戦(楽天モバイル)では1点リードの9回にサヨナラ逆転負けで救援失敗したが、その後は7試合連続無失点。26日のオリックス戦(エスコンF)で1回2奪三振無失点と完ぺきな投球でプロ初セーブをマークした際は、お立ち台で感極まり涙を流した。

「すごくうれしいです。自分のベストのボールを1球1球投げようと頑張りました。本当に最高の景色ですし、これから何十回、何百回と見られるように頑張りたいと思います。すごく責任を感じるポジションですけども、やりがいのあるポジションなのでシーズン最後まで頑張りたいと思います」と誓った。

 野球は9回の3アウトを取るのが最も難しいと言われている。剛速球や絶対的な変化球だけでなく、精神的な強さも求められる。田中正は修羅場を潜り抜けることでたくましくなっているように見える。5月4日の西武戦(ベルーナ)では、1点リードの9回に登板して栗山巧中村剛也を連続三振。愛斗に左前打を許し、史上6度目の継投によるノーヒットノーランを逃し、続く鈴木将平の中前打で二死一、二塁のピンチを迎えたが、外崎修汰を内角高めの直球で空振り三振に仕留めて雄叫びを上げた。今季14試合登板で4セーブ6ホールド。移籍1年目でリリーバーとして不可欠な存在になりつつある。

スケールの大きい投球スタイル


5月7日の楽天戦では7年目でプロ初勝利をマークした


 他球団のスコアラーは、田中正についてこう分析する。

「150キロを超える直球を投げる投手が珍しくないが、田中正の球質は球速以上のキレがあるので打者からすると手元でホップするような軌道に感じる。フォークの精度も高いので、1イニングだと攻略するのが難しい。もともと持っている潜在能力はずば抜けている。ソフトバンクのときは故障もあり高いパフォーマンスの再現性が課題でしたが、結果を出すことで自信を深めている部分も大きいと思います。球界を代表する守護神になる可能性を十分に秘めています」

 ソフトバンクで過ごした6年間は決して遠回りではない。スケールの大きい投球スタイルにはロマンが詰まっている。日本ハムファン、ソフトバンク時代から応援してくれるファンの期待に応えるためにも、右腕を振り続けて恩返しする。

写真=BBM
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