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阪神・岡田彰布監督の下で復活した天才プレーヤーに、「首位快走の陰のMVP」と高評価が

 

攻守に躍動して勝利に貢献


攻守に躍動して勝利に貢献している木浪。持っている能力は高い


 首位を快走する阪神。攻守に貢献度が非常に高いのが、遊撃のレギュラーに返り咲いた木浪聖也だ。

 岡田彰布監督が就任しなければ、今年の活躍はなかったかもしれない。プロ1年目の2019年は113試合に出場して打率.262、4本塁打、32打点をマーク。強肩で安定した送球を誇り、遊撃での守備範囲も広い。打撃もパンチ力があり大きな可能性を抱かせたが、プレーにムラがあるのが課題だった。21年に中野拓夢に遊撃のレギュラーを奪われると、出場機会が減少。昨年は41試合出場で打率.204、1本塁打、6打点と伸び悩んだ。だが、岡田監督が就任して守備強化の観点で中野を遊撃から二塁にコンバートしたことにより、木浪に遊撃でチャンスが巡ってくる。

 小幡竜平との競争となったが、4月上旬に与えられたチャンスを生かして「八番・遊撃」でスタメンに定着。37試合出場で2失策と安定感あふれる守備に加え、打撃も打率.310の好成績を残している。今月11日のヤクルト戦(甲子園)では、2試合連続完封負けと停滞していた打線に火をつけた。2回一死三塁でサイスニードのチェンジアップを振り抜くと、打球は右翼フェンスを直撃。自身3年ぶりの三塁打で先制点を奪うと、同点で迎えた8回一死一塁では三塁・村上宗隆のグラブをはじく二塁打で好機を拡大。相手守備の野選で決勝点を呼び込んだ。

「貧打が課題だった阪神の得点力が大幅に上がっているのは、『恐怖の八番』として活躍している木浪の存在が大きい。下位でチャンスメークしてどこからでも得点が取れる打線になっている。遊撃でも再三の好守で投手を助けていますし、ここまでの活躍は陰のMVPと言って良いでしょう」(スポーツ紙デスク)

球宴ファン投票でも票を集める


好調なバッティングで阪神の得点力を高めている


 セ・リーグの遊撃の中でも、木浪の活躍は際立っている。巨人坂本勇人は春先に打撃不振でスタメン落ちを経験し、ヤクルト・長岡秀樹も打率1割台と打撃で試行錯誤を重ねている。中日広島DeNAも遊撃を1人の選手で固定できていない。NPBが今月22日に行った球宴ファン投票第1回中間発表では、岩崎優(中継ぎ投手)、大山悠輔(一塁手)、中野拓夢(二塁手)、近本光司(外野手)と共に、木浪が遊撃部門で1位に選ばれた。

恩師の「木浪評」


 亜大で指導を受けた恩師の生田勉監督は、21年3月に週刊ベースボールの「あの時代の記憶 恩師が贈る言葉」という企画で木浪について、こう語っている。

「私自身も何百人、何千人と選手を見てきたわけですから、どういう選手がプロで通用するのかは、分かっているつもりです。その中でも聖也の動きはピカイチでした。センスのある選手というのはプレーの中で関節や股関節に力が入らないんです。守備で捕球のときにポロッとはしますが、肩は強いほうではないのに、送球では暴投が少ないのはその関節の使い方がうまいから。それに関節に力が入らないということは、余計な力が体全体に入らないため、ケガをしにくい。だからこそ聖也はプロですぐにやれると思っていました。もちろん現状の活躍ぶりというのは、それくらいやって当たり前だと思っています」

「聖也は本当に欲がない男です。たぶんレギュラーを獲りたいという気持ちはあっても、3割30本塁打を打つ、というような目標設定ができない性格だと思うんです。つまり、性格がいいのでそういう設定をすると『木浪、何言ってんだよ』と言われるだろうな、と思ってしまうタイプ。プロで長く活躍するには、欲をもっと出してほしいですし、目的意識をはっきり持って練習なり、試合なりに臨んでほしいです。それができるようになるとすごいプレーヤーになると思っています。それだけの資質を持った選手なのですから」

 入団5年目。紆余曲折を経て、レギュラー獲りに挑む木浪にはたくましさを感じる。結果を出すことで自信を深めている部分があるだろう。阪神の命運を握るキープレーヤーだ。

写真=BBM
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