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遅れてきた“オールドルーキー”加藤豪将 日本ハムをさらに上昇させていく存在

 

11年目のNPBデビュー


一軍昇格後、力強いスイングで快打を連発している加藤豪


 出遅れていた28歳の“逆輸入ルーキー”加藤豪将が、デビューから大暴れを続けている。

 アメリカ・カリフォルニア州出身、2013年のドラフトでヤンキースから全体66番目の2巡目指名を受けると、昨季は10年目にしてブルージェイズでメジャー初昇格を果たした。それでも「達成感はなかった。自分を高めていくことが野球を続ける意味。日本人である自分が日本の野球を学ぶことで、どこまで高めることができるか楽しみになった」。秋のドラフトで日本ハムから驚きの3位指名を受けると、NPBでプレーすることを決意するのにためらいはなかった。

 二塁を中心に外野もカバーできるユーティリティー、パワーも兼備するシュアな打撃、10年をかけて夢のMLBの舞台へとたどり着いた鋼のメンタル。新庄剛志監督も「セカンドで五番、六番でいければ、強いチームになる」と期待を懸けていたものの、自主トレで右手人さし指を骨折、さらに3月には右腹斜筋肉離れのアクシデント。イースタンでの実戦復帰は5月にまでずれ込んだ。

 だが、離脱している間も心が折れることはなかった。5月9日に実戦復帰すると、初のフル出場となった同12日のイースタン・ロッテ戦(鎌ケ谷)の試合後、「アメリカでも試合に出ない期間はメンタルの準備をしていた。1試合ぐらいフルで出られれば、もう何連戦でもいける」と手応えを口にした。アメリカで10年間プレーしたキャリアが、心をタフにしていた。

 待望のデビューは5月25日、エスコンFでのソフトバンク戦。六番・二塁で昇格即スタメン出場を果たすと、「初打席は1回しかない。できるだけエンジョイしようと」という第1打席で中前に運び、NPB初打席初安打。新庄監督が自ら要求した記念のボールを受け取るのを見て「うれしかった」と声を弾ませたが、それは快進撃の序章に過ぎなかった。

鮮烈な10試合連続安打


6月10日の阪神戦では決勝の二塁打を放ち、一塁上で吠えた


 デビュー2試合目に初の適時打を放ち、3試合目には初の長打となる二塁打。そして4試合目、交流戦初戦となった5月31日のヤクルト(エスコンF)では「人生でも初めて」という2打席連続本塁打でパンチ力を見せつけると、もう止まらない。さらに2本の本塁打を重ねながら、連続試合安打はNPB最長タイの10試合まで延びていく。6月4日の巨人戦(東京ドーム)からは4試合連続の複数安打で、打率は.425まで急上昇し、指揮官も「ゾーンに入っている。何も言うことはない」と絶賛した。

 守っては本職の二塁に加え、チーム事情で一塁も任される。6月8日の広島戦(エスコンF)ではついに連続試合安打が止まり、一塁守備で記録には残らないミスを犯した。一塁線のイレギュラーに対応できず三塁打としてしまい、バントの処理では上沢直之とお見合いになるなど「自分のせいで負けた」とうなだれた。それでも「引きずっていたら申し訳ない。切り替えないと」という言葉を有言実行できるのもこの男の強さだ。

 2試合の無安打で迎えた6月10日の阪神戦(エスコンF)、3対3の8回無死一、二塁。新庄監督の「打て」のジェスチャーに燃えた。「明らかにバントのシチュエーションだったが、監督が打てと言ってくれたので、自分の仕事をしようと思った」。中前へ決勝の適時打を放つと、いつも笑顔をたたえながらも感情を露わにしない男が、一塁上で雄叫びを上げた。

「We did it!」

 お立ち台でのこの第一声がすべてだろう。「俺たちはやったぜ!」。続けて「勝つことしか考えていない。1試合1試合、勝ちにこだわっていくだけ」とファンに力強くチームの思いのすべてを代弁した。その姿を見て、新庄監督は「いいチームになってきたなあ」と感慨深げにつぶやいていた。

 加藤豪という新たな、強力なピースが、必ずやファイターズをさらに上昇させていくはずだ。

写真=BBM
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