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川口和久WEBコラム

菅野智之の完全復活なくして巨人の優勝はあり得ない/川口和久WEBコラム

 

試行錯誤の期間は終わったか



 7月8日、東京ドームでの巨人─DeNA戦で、レジェンズシートの解説をした。

 テレビ、ラジオと違い、試合前、お客さんに、この試合のポイントを説明する時間が5分ほどあるのだが、そのとき、この日の巨人先発・菅野智之の好不調の判断方法を話したら、少しどよめいた。

 俺の巨人コーチ時代に菅野は入団し、コーチとしては2年の付き合いだが、まだまだ未完成な状態からプロに適応していく段階を間近で見たこともあり、思い入れのある選手の1人だ。

 退団後も彼のゲームでのピッチングは、欠かさず見ている。素晴らしい天性を持つ選手だが、常に妥協せず、上を目指してフォームなどを試行錯誤している姿が、見ていて興味深いし、楽しい。

 ただ、近年は故障が多く、さらに今は34歳という年齢との戦いもある。

 今はトレーニングやサプリも進化したので昔のように30半ばから一気に球威が落ちることはないが、どうしてもフォームに力感がなくなり、これを無理につくろうとするとバランスが崩れてしまう。

 そのときそのときで、現状の自分に合ったフォームと投球スタイルをつくり上げることが必要になるが、前回、そしてこの日の登板を見ると、菅野はその答えを見つけたかな、と思った。

腰の回転がバロメーターに


 話を戻そう。

 あの日、菅野マニアの俺が、お客さんに説明したのは、腰の回転だ。

 若いときから、菅野が悪いときは、地面に対し、腰が平行に回る、いわゆるサイドスローのような回転となっていた。

 こうなると、イメージするストライクゾーンへのラインがずれ、腰だけでなく、胸、肩も一緒に横に回ってしまうので、ボールの出どころが打者から見えやすくなる。

 一方、いいときは腰の回転に少しだけだが、角度がある。右側の腰を見ていると分かるが、高いところから低いところへの角度のある回転だ。このときは球の出どころが打者に見えづらくなり、球に角度がついてフォークもしっかり落ちる。

 技術的な問題ではなく、疲労の蓄積などからだとは思うが、あの日は、いいときの菅野になっていた。

 現在のセ・リーグは、首位の阪神がもたつくうちにDeNA、広島、巨人と4位までの差が詰まって来た。

 今までの菅野は、春と秋がよく、夏に少しバテるところがあったが、今年は休養(?)十分。ここからの巻き返しのキーマンになることは間違いない。

 これだけは断言できる。

 菅野の完全復活なくして巨人の逆転優勝はあり得ない。
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