シーズン第1号が歓喜の号砲に
史上最強の助っ人の一人に数えられるバース
2023年、
阪神が好調だ。率いるは
岡田彰布監督。05年のリーグ優勝でも監督として指揮を執っていたが、古いプロ野球ファンにとっては現役時代、1985年の歓喜のほうが強い印象を残しているかもしれない。このときは不動の五番打者。その前の四番は“ミスター・タイガース”ともいわれた
掛布雅之だった。さらにインパクトだけでなく数字も残したのが、掛布の前を打っていた
ランディ・バースだ。
このとき来日3年目。それまでの2年間の成績は他を圧倒するようなものではなく、契約を切られる可能性もあったというが、就任したばかりの
吉田義男監督が「絶対に必要」と断言、残留となり、むしろ年俸がアップした。これが歓喜につながるのだが、迎えた85年、バースは開幕から不振。シーズン第1号は4月17日の
巨人戦(甲子園)だった。ただ、そこから伝説が始まる。バックスクリーン方向へ待望の本塁打を放ったバースに続いて、掛布、岡田と3者連続でバックスクリーン方向へ本塁打。古い阪神ファンにとっては語り草の“バックスクリーン3連発”だ。
もちろん、この時点で阪神の21年ぶりリーグ優勝が決まったわけではないのだが、少なくとも阪神ファンたちによる“猛虎フィーバー”は、ここから始まった気がする。そして、それに応えて阪神は優勝、2リーグ制となって初の日本一に。これは2023年の時点でも唯一の快挙となる。
ファンから「神様、仏様、バース様」と称えられたバースは当時のプロ野球記録だったシーズン55本塁打に迫る勢いで、54本塁打で本塁打王に。134打点、打率.350で三冠王に輝いている。長打もさることながら、安定感もバースの持ち味で、翌86年に2年連続で三冠王となったときの打率.389は現在もプロ野球記録として残る。
チーム歴代の助っ人でも数字は圧倒的だ。通算安打では21世紀の
マット・マートンに及ばないものの、202本塁打、486打点はトップ。打率でもマートンの打率.310を大きく引き離した打率.337で、通算でもチームの“三冠王”となる。このバースの打率は2000打数を“規定打数”とした場合、すべての助っ人を対象としても“首位打者”となる数字だ。
写真=BBM