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“特別なポジション”で輝きを増す巨人の“若大将”岡本和真/サード新伝説

 

巨人長嶋茂雄が象徴的だが、かつて「三塁手」は守備の花形であり、打線においてもチームの看板を背負うことが多かった。その後、小粒になったとも言われた時代を経て、今、若き強打の男たちがその座に就き、新たなる伝説を築こうとしている。
※記録は8月5日現在

攻守で秀でたポテンシャル


巨人・岡本和真


 ジャイアンツの、ホットコーナーが似合う男になってきた。6月19日の開幕から、毎試合のように打順を変える原辰徳監督も、“四番・サード”だけは動かさない。

 4年ぶりに監督に復帰した昨季は、「ビッグベイビー」と呼び、ポジションはもちろん、打順も時には下位に降格させるなど、まだまだ子ども扱いしていたが、今春キャンプ時点での仕上がり具合を見た指揮官は、その呼称を封印することを決める。「自立心の中でね、自分の野球スタイルを確立させようというものが非常に強くなってきました。取り組む姿勢というのが、1ランク2ランク上がったなという感じはします」と高く評価。自身につけられ、長年、ファンの間でも親しまれてきた「若大将」の愛称を譲ることを明かし、あわせてジャイアンツ伝統の“四番・サード”固定を断言している。

 2代目・若大将襲名にまんざらでもない岡本は、新型コロナウイルス感染拡大にともなう個人調整期間も自らの打撃に向き合い、最高の状態で開幕を迎える。阪神との開幕シリーズ(東京ドーム)初戦こそ無安打だったものの、2戦目から10試合連続安打をマークするなど、首位を快走するチームの快進撃を、そのバットで支えた。24歳の誕生日を迎えた30日のDeNA戦(東京ドーム)では、5号ソロなど2安打2打点。この時点の打率.475、12打点はすべてリーグトップで、一時は“三冠”に立ったほどだ。

 その後、打率は3割を切ったが(.295)、現在の岡本のすごさは、得点圏打率.349に表れる勝負強さにある。前半戦のハイライトは5連勝で迎えた7月19日のDeNA戦(横浜)だ。1点を追う9回、DeNAのクローザー・山崎康晃の前に二死二塁まで追い詰められたが、丸佳浩の二塁内野安打で増田大輝が二塁から一気に生還し同点とすると、ここで打席に立った岡本が右越えに勝ち越しの2点本塁打。5対3で劇的勝利を収め、チームはその後、連勝を7まで伸ばし、首位を固めた。

 ちなみに、ここまで岡本が勝ち越し&逆転打(本塁打含む)を放った試合は6試合あり、うち5試合で勝利に結びつけている。昨季、リーグ優勝を経験し、「僕が打てれば勝てる試合が増えるし、打てなければ難しい試合が増える、というのは感じました」と自覚を深めた四番に対し、主将の坂本勇人や、前を打つ丸佳浩も、後輩への信頼を隠さない。

安定感を増す三塁守備


 もっか本塁打ランキングトップ(14本塁打)の打撃面ばかりが目立つが、三塁守備も安定感を増している。18年に読売巨人軍第89代四番打者に抜擢された当初は、打撃を優先させるため、ファーストでの出場(126試合)がメーンだった。ただ、サードの守備が拙かったわけではない。

 この当時、一軍の内野守備走塁コーチを務めた井端弘和氏も「春と秋のキャンプ、一軍帯同時はつきっきりで股割をさせたり、スローイングを矯正し、18年ころには安心して見ていられるようになっていました。むしろ、ファーストも合っていた。そこで出場を重ねることで、打球に慣れた部分も大きいと思います。今季からサード固定ですが、楽を覚えなければ、サードもまったく心配なく守っていけるはずです」と太鼓判を押す。

 長嶋茂雄(終身名誉監督)、原と受け継がれてきた、「四番・サード」は、ジャイアンツにとって特別なポジション。若き主砲がチームの顔となる日も近い。

写真=BBM

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