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大島康徳コラム

巨人の浮上にはまだ時間がかかる。阪神はその間に走れるかです【大島康徳の負くっか魂!!】

 

巨人岡本和真は、テークバックのときに上体をひねり過ぎており、戻してくるときに「間」が取れていない印象を受けます[写真=前島進]


打てば連勝もできるが……


 この号が出るころには少し時間がたっていますが、この1週間はいろいろなスポーツが花盛りで、水泳で池江(池江璃花子)さんの頑張りを見て、ゴルフのマスターズで松山(松山英樹)選手の優勝を見て、メジャー・リーグも見て、日本のプロ野球も見てと、もう、至福の時を過ごさせてもらった、という感じでしたね。

 プロ野球のほうも開幕から対戦がひと回りし、2巡目に入っていますが、計画どおりに行っているチーム、そうでないチーム、さまざまですね。

 セ・リーグでは優勝候補の本命と言われた巨人がもう一つ波に乗れませんね。逆にこのチーム状態で5割あたりをキープしながら戦っているところが強いと言えるかもしれませんけれども。

 新型コロナの影響で丸(丸佳浩)、ウィーラーが出られないのが痛いですね。その状況下で、坂本勇人、岡本和真が当たっていないですから、さすがに得点力が上がりません。

 岡本和は、僕の見た感じでは、テークバックで上体をひねり過ぎているように思います。それを戻してくるときにねじれたままで止まる部分があれば、そこでピッチャーとの「間」ができるのですが、今はねじり過ぎて戻してくるとき一気に動かしてくることになっているから「間」が取れていません。ちょっと、出合い頭以外にはボールをつかまえられない形になっている気がします。

 坂本勇人は、アウトサイドのボールに対して、ちょっと感覚のズレが出ているように見受けられます。変化球系もストレート系も、アウトサイドをいとも簡単に見逃していますし、振りにいってもバットの先に当たることが多いです。

 投手陣は、菅野(菅野智之)や戸郷(戸郷翔征)であまり勝てていないとはいえ、今村(今村信貴)とサンチェスがいいので、打線さえ打てば大きい連勝ができる可能性はありますが、打線が爆発するまでにはもう少し時間がかかると思いますね。

 ほかのチームとしては、そうして巨人がもたついている間に、どれだけ走れるか、ということになるわけですが、そこで今、走り出しているのが阪神です。いろいろなことがうまく回っていますよね。

 これはやはり、打率こそ高くないですけど、やっぱり「佐藤(佐藤輝明)効果」だと思います。彼の存在がチーム内にも大きなインパクトを与えているのではないでしょうか。彼が打席に入ると「何か起こすんじゃないか」という雰囲気がありますもんね。三振もしますけど、横浜スタジアムの場外まで飛ばしたりね。そうすると、ファンも盛り上がりますし、チーム内にも「やっぱり当たったらスゴいな」という気持ちの高揚をもたらします。

 阪神はもともとピッチャーはいいですからね。失点を抑えて、少しずつ点を取りながら、抑えで逃げ切るという勝ちパターンは持っています。9回で打ち切りという今季のルールも、思い切った継投に出ることができますから、有利に働いているかもしれません。

 大山(大山悠輔)や近本(近本光司)は本調子とは言えませんが、それでいてこれだけ勝っているというのは、むしろ今後も楽しみと言えるのではないでしょうか。今年はエラーもそれほど出ていませんしね。

外国人選手合流が次のカギ


 広島もうまくスタートを切りました。松山(松山竜平)は戦列を離れましたが、菊池涼介、西川(西川龍馬)、鈴木誠也といる打線はいいですよね。守備面でショートの田中広輔のエラーが多いのはちょっと気になりますけれども。

 今、チームの原動力になっているのは、栗林(栗林良吏)ら、リリーフのルーキー選手でしょう。これがもっている間はいけるんじゃないでしょうか。ただシーズンは長いので、どこかでつまずいたときにどうなるか、ですよね。

 わが古巣の中日は、また打てない、「ここで一本」が出ないチームに戻ってしまいましたね。思い切って根尾(根尾昂)あたりをもっと使っていったりするのも手かもしれません。例えばライトで固定するとか。守備を考えたら平田(平田良介)は捨てがたいですが、バッティングを見ていても何年か前のいいときの感じがありませんのでね。

 打線がビッグイニングをつくれないので、いつもいつも僅(きん)差のゲームになっては、自慢のリリーフ陣もいつかへばりが来かねません。中日はやはり、打線が活性化されてこないと、苦しい戦いが続くと思いますね。大野雄大もなかなか状態が上がってこず、チームの浮上にはまだちょっと時間がかかる気がします。

 そう考えてくると、巨人も中日もすぐによくなる感じではないですから、全体の流れとしてはその間に阪神がどれだけ走れるか、という感じになってくるでしょう。まあ、阪神が走ると、いつも野球界は結構盛り上がりが出てくるので、いいんじゃないですかね。これをどこかが追いかける形になってくれば、面白いと思いますよ。

 ただ阪神も、これから新外国人選手が加わって、それを使おうとしたらかえってチーム内のバランスが崩れてしまった、みたいなことがあるかもしれません。今年は順調に行っているチームには、そういう部分も難しい判断が出てくると思います。

 逆に、今、不振に陥っているDeNAなんかにとっては、外国人というピースがハマることは、DeNAらしさを取り戻すための材料になりますし、また、そうしなければいけないでしょう。そういう意味では、まだまだ今年は、ペナントレースの風向きが変わってくるきっかけは、今後いろいろあるかもしれませんよ。

PROFILE
大島康徳/おおしま・やすのり●1950年10月16日生まれ。大分県出身。右投右打。中津工高からドラフト3位で69年中日入団。3年目の71年に一軍初出場の試合で本塁打を放つ。76年にはシーズン代打本塁打7本の日本記録。翌77年に打率.333、27本塁打の活躍で不動のレギュラーとなり、79年にはリーグ最多の159安打、36本塁打、リーグ3位の打率.317の大活躍。83年には36本塁打で本塁打王にも。88年に日本ハムへ移籍、90年には史上最多の2290試合を要して2000安打に到達した。94年限りで現役引退。2000年から02年まで日本ハム監督も務めた。現役通算成績2638試合、2204安打、382本塁打、1234打点、88盗塁、打率.272。

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