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【元阪神・藪恵壹に聞く】大谷翔平選手のピッチャーとして優れている点は?

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.大谷翔平選手がポスティングを申請してエンゼルスに移籍しました。複数球団による争奪戦が展開されましたが、そもそも大谷選手のピッチャーとしての優れている点はどこにあるのでしょうか。160キロを超える球速は分かりますが、カブスのダルビッシュ有選手のように球種が多彩と言うわけではありません。メジャーで活躍するピッチャーとは?(三重県・19歳)



A.何といっても160キロを超えるファストボール。誰もがマネできるわけではない強みと言えます


160キロを超える速球でメジャーでも活躍できるか?


 質問の方が言うように、大谷翔平選手の最大の魅力は160キロを超えるファストボールを持っていることです。スピードのある、力のあるボールを持っていれば、ストライクゾーンで勝負することができます。バッターはスピードに差し込まれる、詰まる、振り遅れることを嫌い、常に速いボールを頭に入れなければなりません。もう、それだけで相手に過剰に意識させることに成功させているわけですから、この時点で優位に立っているわけです。バッターのほうにプレッシャーが掛かり、力が入ってミスショットする確率は、球速のないピッチャーよりも増すことになります。

 スピードのないピッチャーは、ど真ん中のファストボールでは危険があるからコーナーを突かざるを得ないですし、曲げたり、落としたりとより駆け引きに気を遣うわけです。極端な話、少々コースが甘かったとしても、誰もが投げられるわけではない160キロ超のボールは、そう簡単にとらえることはできません。ファストボールが来ると分かっていても、打てるわけではないのです。これが一番の強みと言えるでしょう。

 もちろん、大谷選手もファストボールをど真ん中に投げておけばいいと考えているわけではありません。当然、コーナーを突くことを考えます。まだ制球は甘いにしても、ビシビシにコーナーを突き始めたら、バッターはお手上げでしょう。この部分に、まだまだ伸びしろがあると思いますが、忘れてはいけないのは、球種は豊富ではないにせよ、彼には140キロを超えるフォークなど、こちらも誰にもマネできないボールを持っています。考えてみてください。160キロにヤマを張り、打ちにいったら目の前で消える。これは打てませんよ。球種が多いのは、確かにバッターに的を絞らせないという点でメリットではありますが、大谷選手にはそれを補って余りあるスピードがあるということです。

 メジャーで成功するピッチャーに多いのが、ハードシンカーピッチャーや、左腕でファストボールが強く、チェンジアップやカーブを操るピッチャー。ただし、どんな変化球でも重要なのは、バッターの手元での「LIFE」です。ボールが生きているかどうか。そんなところにも注目しつつ、大谷選手の活躍に期待したいですね。

写真=BBM

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

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