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多くの人に支えられての移籍だからこそ伊藤光にはさらに光り輝いてほしいです【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】

 

活躍の場を探してくれたオリックスにも感謝して、伊藤光にはさらに輝いてほしいです。私の中では「A」評価の捕手ですから/写真=高塩隆


 監督も、プロスカウトも経験した私からすると、評価はずっと「A」です。オリックスからDeNAにトレードとなった伊藤光のことです。ゴールデン・グラブ賞も獲得した捕手ですしね。

 捕手のトレード。特にシーズン途中でのそれは異例でしょうね。ただ、同一リーグではないのでサインに関しては、交流戦終了後ということもあり、公言しないことを前提に変更はしていないかもしれませんね。

 私は今回、オリックスが光の将来を思って決行した素晴らしいトレードだと思います。多分、首脳陣との問題などがあったのではないでしょうか。これだけの捕手が今季7試合しか出場していなかったのですから。それは人間対人間なので、どの社会でも起こりうることですよ。

 ただ、これほどの捕手だけにトレードで出して移籍先で活躍されたくない、と思ってしまう球団だってあるはずです。二軍にずっと置いて「飼い殺し状態」にしておくことだってできる。ただオリックスはそうではなかった。光がしっかりと一軍で活躍できるチームを探してくれたのだと思いますよ。

 1992年途中、私は西武から巨人へトレードとなりました。このとき根本(根本陸夫)のおやじからその話を聞かされました。最後は当時のオーナーである堤(堤義明)さんが「巨人なら」というひと言で決まりました。根本のおやじからは「苦しいときがあったら、いつでも帰ってこい。お前は西武の人間だからな」という言葉をもらいました。

 巨人に行く前に「オレには帰れる場所がある」という安心感というか、安堵感のようなものができたのは事実で、巨人で多少は活躍することができたのもこの言葉があったから。今でも「ウチ」という表現をさせてもらっているのは西武のみです。

 そして、私が2009年の1年間、西武のプロスカウトとしてやらせてもらったときに、トレードを成立させたのは阪神藤田太陽です。水田圭介との1対1でした。

 チームに必要な中継ぎ投手として、二軍を視察して出会ったのが阪神の太陽。西武に必要な戦力で絶対に活躍する、という信念のもと、ピッタリマーク。ただ、ほぼ決まりかけたときに、さあ誰を交換要員にするかとなりました。このときの阪神には赤田将吾(現西武二軍コーチ)がピタリとハマったのですが、あるスポーツ紙がリークして、トレード自体もボツとなりかけてしまいました。それでも必死で成立させたのです。

 そんな強い思いで入団させた太陽の移籍後初登板は、アイツのマウンド姿を見ることができないくらいドキドキでした。そういう思い入れが強い太陽は、今でも私が主催する野球スクールで講師として手伝ってもらっています。

 話は脱線しましたが、光もそういう人たちに支えられ、今、新天地であるDeNAで活躍できているんです。トレードで奔走した人たちのためにも、光るプレーを随所に見せてほしいと、強く願います。

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