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選手たちよ、プロ野球を殺すな【川口和久のスクリューボール】

 

新宿歌舞伎町。まるで映画のシーンのようだ/写真=Getty Images


シーズン休止もある


 俺がコラムのネタに悩んだり、球界の動きで疑問を感じたとき、いつも電話する男がいる。

 元選手じゃないが、球界の裏の裏までよく知っている、同じ昭和34年生まれのスポーツライター、二宮清純だ。彼は愛媛県生まれで、大のカープファンでもある。何を聞いてもすぐ「川口、それはさあ……」と的確な答えが返ってくる。「ライターなんかじゃなく、NPBに入って野球界を変えてくれよ」と何度も言ったことがあるよ。

 今回、あいつと話したのは年俸のことだ。年俸は、その年の活躍によってではなく、前の年の活躍によって翌年の年俸を決めて契約し、それが支払われていく形だが、今年はどのスポーツも休止状態だからね。

 Jリーグではコンサドーレ札幌の選手たちが自主的に減俸を申し出て、総額1億円くらいになるという話があった。俺が「サッカー選手ってすごいよな」と言ったら、二宮がさらりと「そうしないとつぶれる可能性があるんだ」と言った。Jリーグは親会社ではなく、パートナー企業になるらしいが、札幌の場合、ほとんどが北海道の企業になる。北海道の経済界自体が観光を基盤としているところがあるから、今回のダメージは相当なものだ。観客収入がなく、放映権料にしてもダゾーンがJリーグ全体と10年間で2100億円の契約をしているが、試合がない場合、支払うのかどうか。ゼロじゃないとは思うが、相当な減額になるだろう。選手側の危機感が今回の減俸の申し出になったのでは、ということだった。

 でも、じゃあ、プロ野球はどうなるのか。俺は正直、5月開催なんか到底無理だと思っている。ワクチンも治療薬もない状態では、1回収まっても、必ずまた、どこかで広まる。“仮の終息”で、早くて8月かな。そこから準備したら10月開催がやっとだが、1シーズン休止という決断だって当然あるだろう。

選手会が動く時期では


 その場合、球団経営は間違いなくピンチになる。俺は市民球団のカープを真っ先に心配したんだが、二宮は「大丈夫」と即答した。ここでは説明しないが、アイツ、カープの裏事情にむちゃくちゃ詳しいから、カープファンは安心していいと思うよ。

 球団だけじゃない。自粛状態がさらに1、2カ月続いたら、親会社だってただではすまない。すでに電鉄、宿泊関係の打撃はすさまじいものがあるし、新聞だって購読者は激減するはずだ。

 日本以上に悲惨な状況にあるアメリカでは、メジャー・リーグ機構が、すでに年俸を試合数に応じて支払うということで選手会とも合意しているという。つまり試合数半分なら半額ということだ。向こうでは選手会は経営側のビジネスパートナーでもあるから、決断が早かったのだろう、と言っていた。

 で、日本は……となる。選手たちが家で練習をする映像が流れたり、寄付をしたりという話はあるけど、このままでいいのかな。試合数減が現実のものとなってきたし、先ほども書いたが、シーズンそのものが開催されない可能性もある。

 二宮によれば、それでも野球協約上、経営者側からは減俸できないという。要は1試合もなくても全額支払われるということだが、「ああよかった」と言ってる場合じゃないよね。球団経営だけじゃない。日本経済のダメージは相当なものになっているはずだし、その中で世間がうらやむ高給取りのプロ野球選手が、何もしないでいいわけがない。

 早急に選手会で集まって、いろいろな状況をシミュレーションしたほうがいい。試合数が減らなかったとしても10%減俸で、うち5%はコロナ基金とか、明確な方針を出さなきゃいけない時期が来てると思うよ。

 選手たちよ、プロ野球を殺さないでくれ。

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