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早く1本打ちたい開幕戦。でも落合は違ってさすがでした【大島康徳の負くっか魂!!】

 

監督1年目の2000年の開幕戦は無念の逆転サヨナラ負け[写真]。実は監督時代の3年間は一度も開幕戦に勝てませんでした


考え始めるとよくない?


 いよいよプロ野球が開幕。そこで今週は、僕の開幕戦の思い出などをお話ししていきたいと思います。

 開幕を迎える気持ちというのは、若手と、ある程度実績を残してからではまったく違います。若いころは、まず開幕ロースターに入れるかが心配で、そこで残れたら次はスタメンで出られるのかどうか。それがまず頭をよぎりますよね。

 開幕戦を迎える日は、ホームゲームだったら、知っている魚屋さんがタイを届けてくれたりして、それで送り出されたりということもありますよ。それは結婚してからですけどね。ビジターの場合は、ホテルから出ていくので、球団が用意してくれるかどうか。タイの尾頭付きがなければ、アジの開きの頭付きを食べて出ていくとか(笑)、そんなのもありましたよ。

 開幕戦は、オープン戦で状態がいいときは、「これでいける」という気持ちで入るんですが、高揚感もあって力んでしまうのか、意外とそういうときは結果が出ないですね。ちょっと不安があるぐらいのほうがたぶん成績はいいと思います。

 初めて開幕スタメンになった年(1972年)に第1打席でホームランを打っている? それはあまり記憶にないですね。でも1本でも打てていたのならよかったです(笑)。

 若手時代は、後攻ではありましたが、開幕戦で一番打者だったこともあるんですよ(73年)。これは割といいんですよね。トップバッターでなかったら、前のバッターへの攻め方とか、「ああでもない、こうでもない」と考える時間があるんですが、そういう時間もなくて打席に入るから、意外と緊張しなくて済んだんじゃないですかね。

 中日時代は、四番になってからは開幕戦の成績があまりよくない? やっぱりね(笑)。年数がたってくると、相手の攻め方なんかがある程度分かってくるので、そうやって頭を使い出すとかえって結果が出なかったりするんですよね。

 とにかく、開幕戦というのは第一歩ですから、大事にしたいし、早く1本ヒットを出したいな、という気持ちは強かったですね。やっぱり開幕から十何打席ノーヒットとなると焦りますからね。

 ただ、それで思い出すのは87年に1年だけ一緒にやった落合(落合博満)のことです。その年の開幕戦、中日は後楽園で巨人の西本(西本聖)に完封されたんですよ。僕は幸先よく第1打席でヒットを打ったんですが、落合はマークされて、ヒットは1本出たけど内容的には完全に抑え込まれた。それで最初は「コイツ、大丈夫かな」と思って見ていたんですが、ちょっときっかけをつかんだらガーッと上がっていって、4月の下旬にはもう打率3割に乗せていました。僕は開幕戦で目標の1本を第1打席で打ったのに、その後が続かず、そのころはもう打率が1割台で(笑)。こっちはとにかく開幕戦には1本のヒットと思ってやっているんですけど、彼のクラスになると、そんなことはなくて、やっぱりトータルで考えているのかな、と思いましたね。開幕戦も「130分の1」(当時は130試合制)の4打席だとね。「コイツはやっぱりスゴい」と思いました。僕は開幕戦を「130分の1」とは考えられなかったですね。

 日本ハムに移籍してからでは、その年(88年)の開幕戦をよく覚えていますね。あの時は、外国人選手2人(ブリューワとデイエット)がケガしちゃって、僕がいきなり四番で開幕を迎えることになったんですよ。「パ・リーグのピッチャーってどうなんだろう」と思いながらも、「ここは何とか自分が打たないと」という気持ちで、相手は兆治さん(村田兆治)でしたが、僕、2本ぐらいヒット打ちましたよ。結局、勝てませんでしたけど。

負けたら「130分の1」


 あと、覚えているのは、やはり監督になってからの開幕戦ですね。選手で迎えるのと、全然気持ちが違います。「絶対に早く1勝したい」というのは、現役時代の「早く1本打ちたい」よりも、断然強かったですね。チームが乗るためにはもう絶対1勝ですから。

 特に印象に残っているのは1年目ですね。8回終わって1点リードで、岩本(岩本ツトム)からミラバルに代えて、逃げ切れると思ったんですけどね。ミラバルが調子が悪くて、延長で逆転サヨナラ負けしました。自分の中では「こうなったらこう」というシミュレーションはしてたんですけれども、やっぱりそのとおりには行かないな、と思いましたね。

 ただ監督になるとね、負けたら都合よく、「開幕戦も130分の1」って考えるんですよ。そこで負けても2戦目勝って1勝1敗にできれば何ということはない。そこの気持ちの切り替えは、割合早くできましたね。勝てるゲームを落として、選手に申し訳ないな、という後悔はありましたけれど。

 それにしても今年は、特殊な開幕になりますよね。相手チームのほかに、目に見えないものが敵としているんで。見えないものに対する防御もしなきゃいけない、自分の成績も残さなきゃいけない、そして経験したことのない夏からのスタートですからね。なかなか落ち着いてはできないと思うんですよ。まあ、逆に落ち着いたときに気持ちのスキが出てしまう、という可能性もありますが。日常生活に対する気の緩みのようなものがね。

 そういうところを含めて、緩められない開幕になるので、選手はちょっとつらいところはあると思いますが、PCR検査なども随時入れながら、何とか12球団皆で乗り切っていってもらいたいですね。

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