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阪神の四番は大山であるべき 佐藤輝は二軍落ちさせたらダメ。3強の中、残り試合を考慮すると若手が多いヤクルトが不気味よ【岡田彰布のそらそうよ】

 

ヤクルトは打線に勢いがあり、まだまだいけそうよ。そこに試合数でほかの2強より5試合多いのがアドバンテージ。そこに奥川(写真)などの生きのいい若手投手も育ってきた。チャンスがあるかもしれんよ[写真=宮原和也]


オリックスは踏ん張り時 阪神は大山に期待するよ


 最初に、パ・リーグの話を。ホンマ、衝撃が走ったわ。オリックス吉田正尚が足の故障で登録抹消となった。彼はチームのポイントゲッターであり、チャンスメークもでき、何より打線の柱である。吉田正に引っ張られて、ここまできたオリックスだ。彼が不在となり、正真正銘の大ピンチが訪れた。

 監督として、この時期、最も怖いのが故障、予期せぬアクシデントである。2008年のことは、これまで何回も書いているけど、阪神巨人のデッドヒートの中、新井(新井貴浩)が腰の故障で離脱。あれはさすがにこたえた。でも、それは誰も責めることはできない。プレーの中で起きたもの。ある意味、仕方がない……と、割り切るしかない。

 オリックスの場合、吉田正に加え、T-岡田、ジョーンズが一時抹消となった。ここ数日勢いの低下は明らかだが、とにかく乗り越えるしかない。久びさにつかんだ優勝のチャンスよ。あらためて、チームが一つになって、危機を脱出してもらいたい。

 その意味では順調に歩みを進めているのがセ・リーグの阪神である。ここまで主力に目立った故障がなかった。選手個々に好不調の波はあっても、アクシデントで戦力がガタッと落ちることはなかった。逆に故障から復帰する選手が現れ、ますます厚みを増している。これは大きなアドバンテージよ。

 勝負の9月、そして10月を迎える。ここにきての大山(大山悠輔)の活躍が頼もしい。サヨナラ本塁打、勝ち越しアーチと、彼が確実にキーになっている。ならば打順はどうする? これを書いている時点は六番だが、オレは声を大にして叫ぶ。「四番に戻すのは今だ!」ってね。

 そもそも今シーズン、大山には四番を任せ、それでシーズンを貫くのがベンチの方針だったはず。ところが不振を極めたところで打順を下げた。それで結果を残すようになった。だから「気楽に打てる六番を続けていくべき」なんて声も出る。オレは反対よ。大山にもっと四番の重みを感じさせるべきなんよ。入団1年目から四番を打ちながら、ここまで、それを守り切れなかった。中途半端なシーズンが続き、今年もそうなりかけていた。でも六番で打って、それで満足か……って話なんよ。四番で結果を残すこと。優勝を争う中で、四番の重さをあらためて知る。彼にはそれが必要やし、タイミングとして、今しかない。四番に戻して、最後までその形でいく。オレはそれがベストな選択やと思っている。

 逆に大ピンチに立たされているのが佐藤輝(佐藤輝明)である。あるスポーツ新聞には「二軍落ちのピンチ」と報道され9月10日に抹消されたが、絶対に二軍に行かせてはならない。開幕から続いていた連続出場が途切れた。その上、二軍落ちとなれば、ホンマ、終わってしまうよ、彼は。こんなときだからこその起用法を考えていいのではないか。例えば9月7日のヤクルト戦(甲子園)。阪神は大量失点で完全な負け展開。この試合、佐藤輝に代わって糸井が先発で出ていたが、こんな負けゲームにずっと出続ける選手ではない。糸井のことを考え、さらに佐藤輝のことを考えれば、2打席でスイッチして、佐藤輝により多くの打席を与えるケースではなかったか。とにかく二軍に落とすことなく、現状打破へ、あらゆる方策をとってもらいたい。

原監督はやや采配が迷走気味 ヤクルトは伸びやか野球


 阪神のライバル、巨人はと言うと、何だろうな、原(原辰徳)監督、相当焦っているな……と感じてしまうのよね。先の甲子園での阪神3連戦を2敗1分けで首位から落ちた。オレがポイントと感じたのが先発投手のことで、中5日で回しているのだ(C.C.メルセデスは中4日)。ここでこんな起用法をするか? 原監督らしくないぞ……と、感じていた。まだムチを入れるときではない。まだまだ先がある。それなのに、間隔を詰めて先発ローテーションを回した。当然のように歪みが出る。セットアッパーに負担がかかり、このままでいけば息切れしてしまうのでは、と心配してしまう。これを焦りと見ている。原監督の計算があるのだろうが、勝負に出るのはまだ早い。そんな気がしてならないのである。

 そしてヤクルトだが、実に不気味なんよね。オレがその不気味さを感じる根拠は、実は試合消化数にある。ヤクルトは阪神、巨人に比べ、5試合ほど多くゲームを残している。これがヤクルトにとっては強みになる。とにかく追いかけるチームにとって、数多く試合を残しているのは、可能性を高めることになる。仮に阪神、巨人との直接対戦をすべて消化して、2ゲーム差をつけられているとする。ここで残り試合の多さとして5試合があり、それをすべて勝てば、2.5ゲーム差を詰め、逆転できるというもの。もちろん優勝は勝率優先だから、単純計算はできないが、ヤクルトには限りない可能性が生まれるわけよ。

 阪神と巨人のマッチレースという多くの予想を覆す、3強形成。離れそうで離れない。射程圏をキープして、ヤクルトはここまできた。奥川(奥川恭伸)に代表されるように、若手の伸びは著しい。打線も強力で、勢いをキープしている。何よりプレッシャーがさほどかからない分、伸びやかに戦えるのがヤクルトの強み。まずAクラスは間違いなく、クライマックスシリーズ進出となる。あとは優勝を……と、思い切りの良さで向かっていけば、ヤクルトにチャンスあり! これは見ものですぞ。(デイリースポーツ評論家)

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