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サトテルを“二軍に落とせた”阪神の二軍力【川口和久のスクリューボール】

 

大不振の阪神・佐藤輝はついに二軍落ち


トロトロに煮込んだ及川?


 最近、俺の周りに阪神ファンが増えてきた。というか、今までおとなしかった阪神ファンが元気になってきた、というのかな。そりゃそうだよね。残り30試合と少しで首位を守り、優勝もはっきり視野に入ってきた。

 阪神も決して勝ち切れているわけじゃないが、ライバル・巨人の失速が激しい。9月に入って6連敗(2分けを挟む)は重症だ(9月11日現在)。原辰徳監督も11日の中日戦(東京ドーム)では24人を使う総力戦を仕掛けたが、それでも4対5で勝てなかった。こんな連敗をしていたら間違いなく優勝できないし、V逸になれば、現在二軍にいる中田翔獲得の責任問題も言われかねない。

 名将・原と言えば、非常識を常識に変える指揮官だが、その前提条件が投手陣だ。試合終盤に打線で奇襲攻撃を仕掛け、成功したとしても、それを勝利で終えなければ、戦いの中に埋もれてしまう。

 とにかく早急に投手陣、それも先発を再編することだ。原監督はその軸に菅野智之を置いているようだが、故障の不安も抱えているし、最後まで投げ抜けるかは未知数だ。原監督も分かっているはずだけどね。

 対して、阪神も先発がすっきりしなかったが、西勇輝が8度目の挑戦でようやく通算100勝目を挙げた。以前、「西が悪いときは手先でごまかしてしまう」と書いたが、10日の広島戦(マツダ広島)では、それまでと違い球持ちがよく、打者の近くで離せていた。8度目となれば、週1回と考えても2カ月だよね。二軍落ちでも、まったく不思議じゃなかったが、矢野燿大監督はよく我慢した。10勝を挙げた秋山拓巳、西とこれからの軸になっていくはずだ。

 投手陣の、いいアクセントになっているのがリリーフ左腕の及川雅貴だ。8月終盤は滅多打ちを食らったが、こちらも二軍には落とさず我慢して使い、9月に入り、大事なところでピシャリと抑えている。昨年1年間、二軍で平田勝男監督が、トロトロになるまで煮込んだ(?)成果だろう。彼を見ていると、俺はジャイアンツの山口鉄也を思い出す。ボールの質、球持ちが良さがだぶるんだ。

3強の浮上のカギは


 一方、大不振だった佐藤輝明は二軍落ち。結果が出なかった最大の理由はボール球に手を出していることだ。現状では質の高い一軍の投手に対応できなかったと言われても仕方がない。阪神の先輩ホームランバッターで言えば、ランディ・バースはボール球に決して手を出さなかった。疲労もたまっている時期だし、このまま一軍に置いてドツボにはまるより、二軍で体の疲れを取り、メンタルをリフレッシュという矢野監督の決断だろう。さらに言えば、ロハス・ジュニアの活躍もあってサトテルが抜けても不安がなくなったこともある。サトテルを二軍に落としたことで、あらためて阪神の力を感じた。

 あとね、サトテルが今後、阪神を背負って立つ選手になるなら二軍を知るのも重要だと思う。どんな環境で、どんな選手たちが一軍を目指し、切磋琢磨しているのか。頂点も底辺も知ることで、自分がどういう位置にあり、何をしなきゃいけないかも分かってくるんじゃないかな。

 彼らの処遇だけではないが、これまで矢野監督を見ていて感じるのは、二軍の使い方のうまさだ。落としたり、我慢したりしながら、うまくやり繰りしている。二軍監督経験も大きいだろうね。選手も二軍落ちは片道切符じゃなく、結果を出せば上げてくれると分かっているはずだ。

 阪神がこのまま逃げ切るか、巨人、ヤクルトが逆転するかはまだ分からないが、俺は先発投手陣をどう確立させるがカギだと思う。そうなると現時点では阪神が一歩リードかな。

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