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松坂に斎藤佑のスターが引退 ホンマお疲れさまよ。阪神とオリックスは20日の試合どちらも痛い結果になったな【岡田彰布のそらそうよ】

 

10月20日の阪神ヤクルトの直接対決は引き分けに。阪神にとっては痛い引き分けやし、阪神は何で攻めなかったのか、疑問に思った5回裏の攻撃やった[写真=早浪章弘]


松坂とは2度対戦 佑ちゃんには電話でアドバイス


 いよいよセ・パの優勝が決まりそうだ。ホンマのホンマ、大詰めにきた。そんなペナントレースのことに触れる前に、現役を引退する選手のことを書きたいと思う。

 まずは松坂大輔である。彼のことはテレビを通して高校時代から見てきた。ホンマ、素晴らしい投手だった。あのピッチングならプロに入っても、十分通用すると思っていたが、それを超える結果を残した。平成の怪物……の名のとおりの内容やった。

 リーグが違ったけど、2005年、オレが阪神監督のときにスタートした交流戦の5月と6月に対戦した。最初の試合はベンチから見て、思わず声が出た。ストレートは速いし、変化球のキレは抜群。これはなかなか点が取れないと覚悟した。ところが、阪神は勝ったのである。スコアは3対2。どうやって3点を奪ったかは忘れたけど、松坂相手に投げ勝ったのが杉山(杉山直久)やった。

 リーグ優勝を果たした05年、杉山は先発で活躍した。象徴的な試合が松坂との投げ合いやったわけよね。数年後、松坂はメジャーに挑戦し、日本人投手の力を存分に示してくれた。接点はなかったけど、とにかくお疲れさまと伝えたい。

 関わりという点では、斎藤佑樹の引退も感慨深い。早稲田大学野球部の後輩である。彼がドラフトにかかるとき、オレが監督だった阪神は同じ早大の大石(大石達也)を1位に指名した(抽選の結果、西武に交渉権)。でも、後輩の動向は気になっていた。日本ハムに入団してから、何度か会ったことがあるし、電話で話したことも。そのとき、斎藤にこんなアドバイスを送った記憶がある。

「どこを目標に置いているのか? 例えばダルビッシュのように、と考えているなら、それは違うやろ。やはりスピードよりコントロール。そして投球術を磨いていくのが、進むべき道じゃないか」

 高校、大学時代にすべてを出し尽くしたのか。プロでは花開かなかったけど、斎藤はスターやったよ。だからこそ、口にできない苦しみが多くあったと思う。それでも人間的な素晴らしさは失わず、ここから新たな人生を迎えるわけよ。人生、ここからのほうが長い。激動の野球人生を駆け抜けたかわいい後輩に、いい人生が待っていることを祈っている。

1点が欲しい場面でバスター 絶対に負けられないのに……


 10月は別れと出会いの季節。そして勝負が決着するとき……。ヤクルトがこのままゴールするのか、阪神が奇跡を起こすのか。注目の直接対決が10月19、20日、甲子園で行われた。負けることが許されない阪神は初戦、投打に圧倒して大勝。夢をつないだ。続く2戦目は緊迫の投手戦となった。

 そして阪神がチャンスを迎えた。5回裏無死一、二塁として初めてヤクルト先発の高橋(高橋奎二)を攻め立てた。打順は下位に向かうが、ここは確実に得点しなくてはならない。阪神としたら、とにかく点を取ること。そして勝つだけ。だから作戦も自ずと決まってくる。この場面、送りバントしかない。オレはそう思った。ヤクルト守備陣はそうチャージしているふうではなかった。ところが打席に入った小野寺(小野寺暖)は初球、バントの構えからバスターに切り替え、フライを上げてしまった。

 なぜだろう? どうしてバントでなかったのか。小野寺がバントが苦手なら、代打を送ってもよかったし、打線が下位だったにしても、ここを勝負と、好投ガンケルに代打を送ってもいい局面。とにかく確率高く1点を奪いにいく場面ではなかったか。それだけに、あのバスターには「?」。厳しいかもしれないが、これは結果論ではない。

 試合は引き分けとなり、ヤクルトの優勝マジックは、この時点で3に減った。もう直接対決は終了した。それだけに引き分けではなく、勝ちにもっていかねばならなかった。この引き分けで、阪神はギリギリのところまで追い込まれたわけです。

 13年前、最後に大逆転を食らった身として、追われるチームはかなりの重圧を感じている。ヤクルトはそんな心理状態だと思うし、そこをタイガースは突かねばならなかった。1点がそれ以上の重みになる。ここまで来れば、出し惜しみはNGよ。チーム力をすべてぶつけるのみ。総力戦でいくべきところで、それができなかった。悔いの残る引き分け……。オレはそれしか考えられない。

 さてパ・リーグはといえば、こちらも大詰めを迎え、オリックスロッテ、どちらに転んでも不思議でない状況である。マジックナンバーが灯っているのはロッテで、当然、有利な展開なのだが、オリックスも負けないでいけば、逆転の目は十分にある、とオレは見ていた。ところが20日の楽天戦(京セラドーム)で、オリックスは敗戦。この1敗は相当痛い。こちらも直接対決はなくなっただけに、オリックスとしては残りを勝ち切り、あとは待つだけ。これしか道はなくなった。

 20日現在、オリックスが残り2試合で、ロッテは6試合。オリックスが2勝すれば、ロッテが優勝にこぎつけるには5勝1敗が必要となる。これは相当厳しい数字になると思うよね。だからこそ、オリックスが夢をつなぐには残りを勝ち、そこから信じて待つしかない。果たして逃げ切れるか、ロッテよ。

 13年前、オレもキリキリと胃を痛めながら、こんな状況を戦った。なんか、それを思い出すよ。(デイリースポーツ評論家)

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