両先発の素晴らしい投球に目を奪われた。8月3日、マツダ広島で行われた広島対DeNAだ。広島先発・
床田寛樹は9回104球5安打無失点、DeNA先発のT.バウアーは10回123球4安打無失点。両先発降板後、リリーフがゼロで抑え、延長12回0対0の引き分けとなった。
床田はこの登板を含めて奪三振率5.09が示すとおり、三振を多く奪うのではなく打たせて取るタイプ。与四球率1.46と制球力に長け、右打者の外角への出し入れも抜群で、変化球も低めにコントロールされている。さらに長いイニングを投げる能力を持つ。すべてが全力投球ではなく、力を抜くべきところは抜く。6回までに出した4度の走者は、すべて二死後。投球の中で、しっかりとギアの上げ下げをしているということだろう。8月6日現在でリーグトップの防御率1.70を誇り、同2位の9勝を挙げているのもうなずけるというものだ。
バウアーも投球が進化している。初回、一死一塁で
秋山翔吾に対してカウント1-2からスライダーを投じたが、内角低めに外れるボール球に。このとき、一走・
野間峻祥が二盗。際どいタイミングでセーフとなったが、DeNAベンチがリクエストを要求し、リプレー検証後に判定が覆った。このとき、バウアーはしっかりとクイックを試みていた。来日当初もバウアーはランナーがいる際、クイックで投球していたが、緩いものだった。しかし、そこを修正。このあと、広島は盗塁を仕掛けにくくなったのは確かだ。
8月6日現在で2位の広島、4位のDeNAが優勝を勝ち取るには、やはり床田、バウアーが先発した試合で負けないことが大きな条件になる。確実に勝利を見込める両雄がカギを握るのは間違いない。
しかし、夏本番を迎えると暑さで投手の体力消耗が激しくなり、打者有利になるというのが球界の定説だったが、“投高打低”の状況は変わらないようだ。
西武の
高橋光成はパ・リーグタイ記録の3試合連続完封がかかった8月1日の
ソフトバンク戦(ベルーナ)で記録達成とはならなかったが7回無失点で8勝目。これで25イニング連続無失点だ。西武は翌日の同カードで先発した
與座海人も9回104球2安打無失点の完封勝利を挙げている。
投手が打者を圧倒する理由の一つにフルスイングの弊害があるのだろう。いまは上位から下位まで、どの打者も強いスイングをしている。状況も考えずに、ただバットを強く振るだけ。たとえ下位の打者が2ストライクと追い込まれても変わらない。普通なら投球に食らいついて、粘って四球をもぎ取って出塁しようと考えてもおかしくないのだが。
下位の打者がこのようなアプローチなら投手にとっては余裕が生まれるはずだ。“しつこい打者”であるべき打者の四球数を見ていくとDeNAの
関根大気は20、
巨人の
吉川尚輝は18、広島の
菊池涼介は16、
オリックスの
茶野篤政は15、ソフトバンクの
牧原大成は8と明らかに少ない。牧原は現在、打率.274だが打撃技術はあるのだから、もっと四球を選べるようになると数字が上がってくるだろう。カウントによって粘りの打撃を心掛ければ“投高打低”の状況も少しは変わってくるはずだ。