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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「醍醐味を堪能できる日本シリーズ第7戦」

 

1979年の広島対近鉄では広島・江夏豊が無死満塁を無失点で抑えて日本一を勝ち取るなど“至極の第7戦”は数多い[写真=BBM]


 勝ったほうが日本一――つまり3勝3敗で迎える日本シリーズ第7戦ほど野球の醍醐味を味わえるゲームはない。1950年から始まった日本シリーズは今年で74回目となる。そのうち4勝3敗で決着したのは21度。そこで、年代別の個人的な“第7戦ベストバウト”を探ってみたい。

 50年代は体感できていないのだが、長嶋茂雄巨人に入団した58年の西鉄と巨人の死闘を挙げたい。3連敗を喫した西鉄が4連勝で逆転、4勝すべてを挙げた稲尾和久は第5戦でサヨナラホームランを放ち、第6戦では完封。第7戦でも先発して1失点での完投勝利(その1点は最終回に出たルーキー・長嶋のホームラン)を挙げるなど、獅子奮迅の働きを見せた。そんな稲尾を讃える地元紙が『神様、仏様、稲尾様』と見出しを打つほどだったのだという。

 60年代を眺めると、関西ダービーとなった64年の阪神対南海が気になる。3勝3敗ともつれながら雨で順延して、第7戦は東京オリンピックの開会式と重なってしまう。甲子園の観衆は1万5172人……日本シリーズ史上、もっとも注目されなかった第7戦だったかもしれない。試合は阪神の先発、村山実から南海が初回、野村克也のタイムリーなどで2点を先制し、南海の先発、ジョー・スタンカが阪神を完封。3対0で南海が勝った第7戦の試合時間は2時間7分……オリンピックで盛り上がる東京を横目に、関西決戦はひっそりと決着していたのだ。

 70年代は76年の阪急対巨人、78年のヤクルト対阪急、79年の広島対近鉄と、4勝3敗で決着した日本シリーズが3度あったのだが、どれも名勝負と呼ぶに相応しい激闘だった。その中から一つを選べと言われたら、やはり“江夏の21球”になる。広島が4対3とリードして迎えた第7戦の9回裏・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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