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第2、3戦の初回、チームを勝利に導く先制打を放つなど、20打数7安打、3打点、打率.350の好成績でMVPを獲得した内川聖一。「たまたま僕がそこで打った。チーム全員に取らせてもらった感じです」と謙遜そ んしたが、その打撃がチームを日本一に押し上げたのは間違いない。阪神バッテリーに脅威を与えたMVP男の打撃を今季限りで現役引退した名捕手、里崎智也氏に解説してもらった。

「少しでもミスすれば打たれてしまう。非常に厄介なバッター」


 素晴らしいバッティングでMVPを獲得した内川ですが当然、阪神バッテリーも警戒していたはずです。僕が現役時代、対戦してきた中でも印象深いバッターの一人ですし、球界の右バッターでもトップと言っても過言ではないでしょう。警戒に警戒を重ねることは当然のことです。ただ、打たれても当たり前くらいの、ラクな感覚で攻めて行った方が逆に良かったのかもしれません。

 僕の感覚ではハイボールヒッターのイメージ。マスクをかぶっているときには、内川が引っ張るのか、反対方向を狙っているのか、どちらを意識しているのかを読み取るように心がけていました。三振をあまりしないですし、狙っている方向によってアウトコースとインコースの使い方がまったく違ってきます。狙いを読めれば、その反対方向を攻めれば打ち取れる確率は上がってくるのではないかと思っていましたね。

 でも、ロッテ時代は結構打たれてしまっていたかもしれません(苦笑)。

 いいバッターですから、絶対に失投を見逃してはくれない。長打はそんなにありませんが、絶妙なバットコントロールを持ち合わせているだけに、どんなボールでも軽打してヒットゾーンに運ぶ技術を擁しています。攻め方が完ぺきにはまれば打ち取ることができますけど、それが少しでもずれてしまうと打たれてしまう。ミスが許されないので、非常に厄介なバッターです。

 パ・リーグで言うと糸井(嘉男、オリックス)、銀次楽天)、中島(裕之、前西武)も同様のタイプのバッターでしょう。引っ張っても良し、おっつけても良しという感じで。本当に打線の中心となっていて、つなぐことも、ランナーをかえす役割もできる。いわゆるポイントゲッターで、そこを抑えると勝つ確率が上がるのは間違いありません。

 内川は重ね打ちも多いんですよね。1本出たら本人も乗っていくし、さらにチーム全体も乗っていく。だから、僕は特に1打席目は必ず抑えたいと思っていました。今回の日本シリーズでも阪神バッテリーは第2、3戦で内川に初回、先制打を許して連敗を喫していました。そのあたりが痛かったのは確かでしょう。
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